「太っていないから脂肪肝とは無縁」と思っていませんか?:じつは、痩せている人でも脂肪肝になるケースは少なくありません。生活習慣や体質が影響して起こる“隠れ脂肪肝”について、原因やリスクを三田医院院長の奥山秀平先生に聞きました。
※2025年12月取材。

監修医師:
奥山 秀平(三田医院)
1999年3月杏林大学医学部卒業。杏林大学第3内科(消化器内科、糖尿病代謝内科)入局。国立横浜病院(現国立横浜医療センター)消化器内科、焼津市立総合病院代謝内分泌内科、杏林大学第3内科(消化器内科)聖路加国際病院消化器内科を経て2025年5月三田医院を開院。
痩せている人でも脂肪肝になる?
編集部
脂肪肝は太っている人だけの病気ではないのですか?
奥山先生
痩せている人でも脂肪肝になる場合があります。脂肪肝は肥満の人に多い病気と思われがちですが、「Lean MASLD(リーン脂肪肝)」と呼ばれ、近年注目されています。特に日本人は遺伝的に、痩せていても脂肪肝になりやすい傾向にあります。
編集部
痩せていても内臓脂肪はたまるのですか?
奥山先生
はい。見た目は細くても、内臓周囲に脂肪が蓄積するケースは多く見られます。特に注意が必要なのは、20代の頃にかなり痩せていた人が年齢とともに体重が増加し、現在は標準体重となっているケースです。
編集部
標準体重でも注意が必要な理由はなぜですか?
奥山先生
増加した体重の内訳が脂肪である可能性が高いためです。たとえば、若い頃のBMI(体格指数)が18程度だった人が、現在BMI22になっている場合、数値上は肥満に該当しません。しかし、運動習慣がないまま体重が増えていると、その増加分の多くは筋肉ではなく脂肪である疑いが強まります。その結果、見た目は痩せていても、実際には脂肪肝を合併している場合が多いといえます。
編集部
BMIが正常でもリスクはあるのですか?
奥山先生
リスクはあります。BMIの数値だけでは、脂肪肝のリスクは判断できません。むしろ、20代の頃に比べて現在のBMIが増加している場合は、脂肪肝を合併している可能性が高いと言えます。
編集部
男性と女性で差はありますか?
奥山先生
飲酒量やホルモン、体脂肪のつき方によって男女差が出る場合もあります。通常の脂肪肝は男性に多く見られます。一方で、痩せている人の脂肪肝は、男性だけでなく女性にも多いとされています。
「痩せているのに脂肪肝」の原因は?
編集部
痩せているのに脂肪肝になる“体質”は本当にあるのですか?
奥山先生
はい、あります。痩せ型脂肪肝には、遺伝体質が大きく関係していると考えられています。特に日本人は、肝臓で脂肪をエネルギーへ変える能力が遺伝的に弱い人が多いと判明しており、体型がスリムでも肝臓に脂肪が蓄積しやすい傾向にあります。また、筋肉量が少ないと基礎代謝が低下し、脂肪燃焼が十分に行われなくなるため、痩せていても内臓脂肪が増えやすくなります。
編集部
食事の内容が原因になるケースはありますか?
奥山先生
はい。痩せている人の中には「量は食べないものの、糖質に偏りがち」という人が少なくありません。白米、パン、麺類、甘い飲み物、お菓子など、脂肪よりも糖質を多く摂る食習慣は、肝臓で中性脂肪を作りやすい状態を招きます。
編集部
食事の摂り方も関係しますか?
奥山先生
食事の時間が不規則であったり、朝食を抜いたりして血糖値が急上昇する“ドカ食い”につながる場合も、脂肪肝の原因になります。痩せていても、食事内容によって肝臓へ負担がかかるケースは多いといえます。
編集部
そのほかの原因はありますか?
奥山先生
筋肉量や運動習慣も関係しています。痩せている人は「脂肪が少ないから大丈夫」と運動を軽視しがちです。しかし実際には、筋肉量が少ないと脂肪を燃やす機能が弱くなり、肝臓に脂肪が蓄積しやすい状態になります。慢性的な運動不足も、脂肪肝の大きなリスクです。
編集部
食事や運動以外の原因はありますか?
奥山先生
ホルモンバランスの乱れや、腸内環境の悪化によって脂肪肝になるケースもあります。女性は閉経後にエストロゲン(※1)が減少すると脂肪代謝が低下し、肝臓に脂肪がつきやすくなる場合があります。一方男性も、更年期を迎えてテストステロン(※2)が不足すると、内臓に脂肪がつきやすくなります。
編集部
加齢以外に影響を与える要素はありますか?
奥山先生
腸内細菌の働きが低下すると、食べ物から吸収されるエネルギーの使い方が変化し、肝臓に脂肪をため込みやすくなると知られています。ストレスや睡眠不足によるホルモンの乱れも、大きな影響を与えます。

