スウェーデン・カロリンスカ研究所の研究グループは2026年4月17日、60歳以上の高齢者2282人を対象にした平均9.3年の長期追跡調査により、貧血のある人は認知症の発症リスクが約1.66倍高まることを発表。詳細はJAMA Network Openに掲載されました。この内容について伊藤先生に伺いました。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
スウェーデン・カロリンスカ研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。
伊藤先生
認知症のない60歳以上の高齢者2282人を対象に、平均9.3年にわたってスウェーデンで行われたコホート研究の結果、貧血が認知症の発症リスクを高めることがわかりました。追跡期間中に362人(約15.9%)が認知症を発症し、酸素を全身に運ぶ「ヘモグロビン」値が正常な人と比べて、低値な人(貧血のある人)では認知症の発症リスクが約1.66倍高くなりました。また、貧血のある人は、アルツハイマー病に関連する血中タンパク質(p-tau217、NfL、GFAP)の値も高いことが明らかになりました。特に、貧血があり、神経の損傷を示す「NfL」の値も高い人では、認知症のリスクが約3.64倍にまで上昇しました。本研究は、貧血と脳の病的変化が互いに影響し合い、認知症の発症に関わっている可能性を示しています。認知症予防に向けて、貧血の早期発見および適切な対応が重要であることが示唆されました。
研究テーマになった疾患とは?
編集部
今回の研究テーマに関連する認知症について教えてください。
伊藤先生
認知症の症状は、大きく「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に分けられます。中核症状では、数分前の出来事を忘れる、同じことを何度も言う、約束を忘れるといった記憶障害のほか、日付や慣れた道がわからなくなる(見当識障害)、手続きや状況理解が難しくなる(判断力の低下)、調理や身だしなみなど身の回りのことができなくなるといった兆候がみられます。行動・心理症状では、不安や憂うつ、怒りっぽさ、幻視、自分のものを盗られたと疑う(もの盗られ妄想)などがみられます。
また、認知症の前段階として軽度認知障害(MCI)があります。MCIとはもの忘れの自覚はあっても日常生活には大きな支障がない状態を指します。ご自身や家族で気になる変化を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

