作品に込めた想いと、女性たちの間に横たわる、見えない「分断」について聞いた前編に続き、本記事では、作家そしてAV女優として、自らの立ち位置を問い直し続ける理由や、執筆の意外なルーティンについても詳しく聞きます。「産む理由」より「産まない理由」を求められる
──最新作『あの子のかわり』を書かれるなかで、妊娠や出産への考えに変化は生まれましたか?紗倉:この小説を書くにあたって、出産を経験した女性たちから詳しくお話を聞く機会が何度かあったんです。私自身の根本的な考えは変わらないけれど、具体的な話を聞けば聞くほど、そして年を重ねれば重ねるほど、「妊娠や出産って簡単には語れない話だな」とますます強く感じました。
私自身、今は子どもを持つことにあまり積極的ではありません。けど、だからといって「絶対に産まない」と決めたわけでもなくて。ただ、なんとなく日々感じるのが、「産む理由」についてはさほど問い詰められないのに、「産まない理由」については尋ねられること。体の事情もあることなのでそう簡単には聞かれませんが、たまに「なんで? 産みたくないの?」と聞かれると、そのたびに、相手が納得してくれるような言葉を繰り出さなくてはならない。
これ、妊娠や出産の話と重ねることではまったくないんですが、この質問って「なんでAVに出たの?」というこれまでずっと投げかけられ続けてきた質問と、構造が似ているなとも思うんです。
「なぜAVに出たの?」と「なぜ産まないの?」は似ている
──「なんでAVに出たの?」という質問も、聞かれた側はすべての人が等しく納得する答えを差し出さなきゃならない空気がありますよね。私も紗倉さんに同じ質問をした経験がありますが(笑)、答えるほうは大変な質問だなと思います。紗倉:これ、すごく難しい話なんですけど、もしも18歳の私が、今みたいにいろいろと考えていたら、AV業界に入らなかったかもしれないなと思うんです。
もちろん、これから新しくAVの世界に入ろうとする人には、メリットもデメリットも全部含めてきちんと知った上で、なるべく傷つかないでほしいと勝手に願ってしまいますし、AVの仕事を無責任に勧めたいわけでは決してありません。
ただ、もしも今の思考過多な私が、もう一度あのスタートラインに立って決断を迫られたら、きっと足がすくんでやらない道を選んでいると思うんです。
人生の中には大縄跳びみたいに、どこかで「エイッ」と飛び込む力が必要な場面って何度かある気がします。私の場合、AV業界には飛び込んだけど、出産に関しては自分を解放して飛び込むタイミングを多少なりとも逃してしまったんだな、と今は感じていますね。

