作家活動10年目。執筆メンタルを支える「神スポット」
──作家活動をはじめて10年目。執筆活動についても、以前とは向き合い方がだいぶ変わってきたそうですね。紗倉:以前の私は、書いた先から大量に文章を削ったり、大幅に修正したりすることも珍しくなかったんです。でも今回は、テーマそのものは重い一方で、とても楽しく書き進めることができました。
やはり大きかったのは、担当編集者さんの存在ですね。作品に対して自分が抱いている熱量と同じか、それ以上の熱量で編集者の方が言葉を返してくださることが、何よりの励みになりました。「豚もおだてりゃ木に登る」じゃないですが、私も担当編集者さんに褒められて木に登り始めるような……そんな高揚感もありました(笑)。
これまではずっと、書くことは孤独な個人戦だと思い込んでいたんです。けれど良い点や改善すべきポイントを具体的にフィードバックしてもらえることが、執筆の道しるべになった気がします。
──書くためのルーティンはあるんですか?
紗倉:メンタルを整えるために、作業場には自分の好きな神様だけを集めた「神スポット」があるんです。ネットで神札スタンドを買って、自分に向けて書いた「書け!」という紙や、担当編集さんからいただいた、「天才です!」という嬉しいメールも一緒に飾っています。締め切り前の苦しい時期には、それらを眺めてなんとか気持ちを奮い立たせてきました。
まあ、その神棚についても母が、「方角が悪い!」「神を雑にまとめるな!」なんて言ってきて、また口喧嘩になったこともあるのですが……(苦笑)。
「女性性を売る立場」という矛盾。AVと小説の両方に救われた
──紗倉さんは長年、「本業はエロ屋」と公言されていますね。小説のお仕事とAVのお仕事、ふたつの相互作用や好循環はありますか?紗倉:この仕事をしていると、「女性としてのあり方」を嫌でも突きつけられるんです。
AV女優としては、「女性性を商品として売る立場」であるがゆえに、AV以外の場所で「女性ならではの苦しさ」を語ろうとすると、「お前は男性の需要があって成立している仕事だろ!」という声が必ず飛んでくる。
そのたびに自分は、「矛盾を抱えた立場なんだ」と痛感させられるんです。そしてその両方の思いが併存することがおかしいという見立てや風潮にも、違和感を覚えています。また、両方のお仕事で、「お前はこれから、どうやって生きていくつもりなんだ!」と、ずっと滑稽なものを見られているような感覚が常にありますね。
ただ、そういった葛藤を抱いて自分の感情を見つめ直す作業は、必然的に書くことへと繋がるように感じますし、今は、AVと小説のお仕事の双方に苦しんで、それでいて救われていますね。自分自身を内省するのは、私にとっては生きていくためにどうしても必要な作業です。だからこそ、この先もきっと書き続けていくのだな、と感じています。
<取材・文/アケミン 撮影/星亘>
【アケミン】
週刊SPA!をはじめエンタメからビジネスまで執筆。Twitter :@AkeMin_desu

