セックス依存症は、性的な衝動や行動を自分の意思によるコントロールが難しくなり、日常生活に影響が出る状態です。性的な関心や欲求は人それぞれですが、「やめたいと思っているのにやめられない」「生活に支障が出ている」などの状況が続く場合にはセックス依存症の可能性があります。
本記事では、セックス依存症の概要や原因、なりやすい人の特徴、疑われる場合の相談先や向き合い方を解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
セックス依存症の概要

セックス依存症は正式な病名ですか?
セックス依存症は正式な病名ではありません。世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類ICD-11で、強迫的性行動症(Compulsive Sexual Behaviour Disorder:CSBD)が示されています。ただし、依存症としてではなく、衝動のコントロールに関する問題としての位置づけです。
そのため、医療の現場ではセックス依存症が患者さんへの説明に使われることがあります。
セックス依存症の診断基準を教えてください
セックス依存症の診断では、性的行動を自分の意思でコントロールできない状態が続いているかどうかが関係します。例えば、性的な衝動や行動を減らそうと何度も試みてもやめられない、または頻度や時間をコントロールできない状態が続く場合です。その結果として、下記のような影響が生じている場合に、専門的な評価が必要になることがあります。
仕事や学業に集中できなくなる
人間関係のトラブルが増える
金銭問題が生じる
健康や生活リズムが乱れる
また、トラブルや後悔が生じているにもかかわらず行動を繰り返してしまう、性的行動が生活のなかで過度に優先されてしまうことなども判断材料です。
性欲が強い人とセックス依存症の違いを教えてください
性欲が強いこと自体は問題ではなく、セックス依存症とは異なります。性的関心が高くても、自分で行動をコントロールでき、仕事や学業、人間関係などの日常生活に大きな支障が出ていない場合は、依存とは考えられません。性欲の強さには個人差があり、それだけで病気と判断されることはありません。
一方、セックス依存症と呼ばれる状態では、性的行動のコントロールが難しくなります。やめたい、減らしたいと思っていても同じ行動を繰り返してしまったり、性的な行動が生活の中心になってしまったりする場合があります。
結果、仕事や学業に集中できなくなる、人間関係のトラブルが増える、金銭問題が生じる、生活リズムが乱れるなど、日常生活に具体的な影響が出る場合があります。
また、行動のあとに強い後悔や罪悪感を覚えているにもかかわらず、同じ行動を繰り返してしまうことも特徴の1つです。
単に性欲が強いかどうかではなく、「自分で行動をコントロールできるか」「生活に支障や苦痛が生じているか」などが、両者を区別する項目です。
参照:『依存症についてもっと知りたい方へ』(厚生労働省)
セックス依存症の原因

セックス依存症の原因を教えてください
セックス依存症は、強いストレス、孤独感、不安や抑うつ、過去の経験など、さまざまな要因が重なって生じると考えられています。依存症全般に共通する特徴は、特定の行動を繰り返すうちに脳の働きが変化し、自分の意思で行動をコントロールしにくくなることです。人は不安やストレスを和らげるために特定の行動を取ることがあります。セックス依存症では、性的行動によって一時的に安心感や快感を得られるために脳が報酬として認識し、同じ行動を強く求めるようになります。結果、やめたいと思ってもやめられない悪循環に陥ります。
誰でもセックス依存症になる可能性がありますか?
セックス依存症は、条件が重なることで誰にでも起こり得る可能性があります。依存症は「意志が弱い人がなるもの」といわれることがありますが、事実ではありません。特定の行動を繰り返すことで脳の働きが変化し、行動を強く求めるようになることが関係していると考えられています。そのため、本人の意思によるコントロールが難しくなります。
セックス依存症になりやすい人の特徴を教えてください
セックス依存症は誰にでも起こりえるものですが、いくつかの傾向が指摘されています。例えば、強いストレスや孤独感を抱えている、不安や抑うつを感じやすい、生活リズムが乱れている、社会的なつながりが少ないなどの状況では、セックス依存症になりやすくなる可能性があります。
参照:『依存症についてもっと知りたい方へ』(厚生労働省)

