米国デューク大学の研究グループは、同大学が特許を取得した実験段階のブラシ生検を用いて鼻奥にある細胞を調べることで、症状が出る前からアルツハイマー病の兆候を捉えられる可能性が示されたことを報告しました。研究内容の詳細について伊藤先生に伺いました。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
デューク大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
伊藤先生
本研究では、「健康な人」、「アルツハイマー病と診断された人」、「症状はまだないものの検査でアルツハイマー病の兆候がみられた人」を対象に、「鼻腔ブラシ生検」という開発中の生検法を用いて鼻の奥にある嗅覚に関わる細胞を採取しました。22人から得られた約22万個の細胞を解析したところ、症状が出る前の段階でも、神経の炎症に関わる免疫細胞や嗅覚神経の細胞に共通した変化が起きていることがわかりました。さらに、別の解析方法でも、免疫細胞の一種であるCD8 T細胞が活発になっていることが確認されました。
つまり、アルツハイマー病では記憶障害などの症状が表れる前から、鼻の奥の嗅覚に関わる細胞で変化が起きている可能性があります。将来的には嗅覚の神経細胞の変化を調べることがが、アルツハイマー病を早期発見する手がかりになるかもしれません。
研究テーマになった疾患とは?
編集部
今回の研究テーマに関連するアルツハイマー病について教えてください。
伊藤先生
アルツハイマー病は認知症を引き起こす病気のひとつで、認知症全体の約半分を占める最も多い原因疾患です。脳にアミロイドタンパクやタウタンパクが蓄積することで神経細胞が傷つき、細胞死を起こしてさまざまな症状を引き起こすようになります。発症前からアミロイドが蓄積し始め、20〜30年かけて徐々に進行するといわれています。最初はもの忘れから始まり、同じことを何度も聞いたり、探し物が増えたりします。進行すると時や場所が分からなくなり、判断力の低下や妄想、道に迷うなど日常生活に支障が出てきます。また、嗅覚は初期から障害されることが多いといわれています。気になる変化があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

