走行中の車の窓から手を伸ばし、並走していたバイクを押して転倒させる──。危険きわまりないこの行為で、バイクを運転していた男性は全治4カ月の重傷を負った。
大阪地裁は4月16日、傷害の罪に問われた30代男性被告人に対し、懲役2年(求刑同じ)、執行猶予4年の判決を言い渡した。
当時、車は時速40キロで走行。車通りも多く、一歩間違えれば命に関わる大事故につながりかねない状況だったとみられる。
なぜ、ここまで危険な行動に及んだのか。
被告人と被害者は、いずれも「相手にあおり運転をされた」と主張。法廷では、徐々にその背景が明らかになっていった。(裁判ライター・普通)
●ドライブレコーダーが捉えた“決定的瞬間”
検察官の冒頭陳述などによると、被告人は父親の工務店を継いで一人親方として働いており、妻や子らと暮らしていた。
当日、片側2車線道路で、被告人の車は右車線を走行。前方を走る被害者のバイクに追いつくと、バイクは一度左車線へ移動した。
その後、被害者は被告人の車に向けて叫び、被告人も窓を開けて言い返した。
双方とも「相手が蛇行運転していた」と主張する運転行為があった後、状況は次第に緊迫していった。
そして、被害者のバイクが再び右側に移った瞬間、被告人は窓から手を伸ばし、バイクを押した。
決定的瞬間は、後続車のドライブレコーダーに記録されている。映像には、バランスを崩して転倒する被害者と、そのまま走り去る被告人の車がはっきりと残されていた。
幸い後続車が十分な車間距離を保っていたため、二次被害は免れたが、被害者はその場で起き上がることができなかった。
●「驚かせるつもりだった」被告人の説明
弁護人は、被害者と示談が成立しており、弁償金はすでに払い済みであること、7年間の免許取消処分を受けたことを証拠として提出した。
被告人質問では、本人が当日の状況をこう振り返った。
その日、仕事現場に連れていった長男が体調を崩し、そのぐったりした様子を見て「一刻も早く帰りたい」という焦りがあったという。混雑する左車線を避けて、右の追い越し車線を走行していた。
そんな中、前方のバイクが「ゆっくりめな速度」と感じ、クラクション(ホーン)を鳴らしたところ、被害者が何かを叫び、その後も蛇行するなどの行為があったと主張。信号待ちで、被害者のバイクが車の右側についた。
弁護人:それで何がありました?
被告人:被害者が『窓開けろ』とか言って、こちらのミラーを叩かれひっくり返されたので、窓を開けてミラーを戻したりしました。
弁護人:その後は?
被告人:信号が変わって先に行ったのに追いついて、幅寄せして被害者のバイクを押しました。
弁護人:なんで押したのですか?
被告人:ビックリさせようと。事故させるつもりなんてありませんでした。
その場を立ち去ったのは、被害者が倒れたことに気付かなかったためと説明。そのため、まだ後ろから追われていると思い、家が近いのに遠回りしたと述べた。
事件の原因について「短気な方なので、イラっとして後先考えられなかった」と振り返った。
被害者への謝罪の言葉を述べたあと、実名報道によって学校などでも不便をかけた家族にも詫びた。

