夫婦喧嘩の翌朝、夫・恒一が姿を消す。連絡も取れないまま帰宅した里奈は、ポストに入っていた離婚届を見て愕然とする。さらに夫からは「一緒にはいられない」と突き放すメッセージが届き...。
夫婦喧嘩の夜、軽く考えていた私
ある夜、私たちは夫婦喧嘩をした。
内容は今でもはっきりと思い出せるのに、どうしてあんなことになってしまったのか、その答えだけがわからない。
言い合いのあと、恒一は無言で荷物をまとめ始めた。
「ちょっと頭冷やしてくる」
そう言い残して出ていこうとする夫に、私は腹が立って、引き止めることもしなかった。
むしろ「勝手にすればいいじゃん」と、投げやりな言葉を返してしまった。
ドアが閉まる音。
そのあと、私は当てつけのように内側から鍵とチェーンをかけて、そのまま布団に入った。
「どうせ帰ってくるだろう」と、高を括りながら...。
帰らない夫、募る不安
翌朝。
目が覚めたとき部屋は、しんと静まり返っていた。
「……恒一?」
呼んでも返事はなかった。
リビングにも、洗面所にも、夫の姿はなかった。
ただ、昨日のままの空気だけが残っていた。
私は、妙な胸騒ぎを覚えながらも、そのまま仕事へ向かった。
その日の仕事は、ほとんど手につかなかった。
スマホを見ても、恒一からの連絡は一切なし。
(そのうち帰ってくるよね……)
そう思い込むことで、なんとか不安を押し込めていた。
しかし...

