沙織からの催促はエスカレートし、「暇だから早く来て」と無理な日程変更を迫られる。自身の体調も限界の中、真理は断り方に悩む。かつての楽しい思い出が足を引っ張り、正直になれない自分を責めてしまう。
友人の催促にうんざり
沙織からのラインは、もはや「相談」ではなく「催促」でした。
『ねえ、2週間後まで待てないよ〜!』
『毎日赤ちゃんと二人きりで暇すぎて、気が狂いそう(笑)』
『平日でもいいから、明日とか明後日とか、もっと早く来れない?』
『慎吾くんも赤ちゃん見たいでしょ?早く抱っこさせてあげたいな!』
スマホを握る手が、かすかに震えました。
彼女にとっては「暇つぶし」の誘いかもしれない。けれど、今の私にとって「予定を早める」ことがどれだけ高いハードルか、彼女は想像すらしていないのでしょう。
返信するのも労力を使う…
「平日でもいいから早く来て、だって。……無理だよ。慎吾の幼稚園の送り迎えもあるし、何より、自分の体が……」
私は吐き気をこらえるように、胸元を押さえました。妊娠3か月。まだ誰にも言っていない、不安定な時期。
おなかの中では新しい命が必死に育っているけれど、その代償として私の体力はマイナスまで削られています。立ち上がることすら億劫なのに、車を運転して、気を遣いながら友人宅を訪問するなんて、今の私には「エベレスト登頂」と同じくらい困難なミッションでした。
「返さなきゃ、とは思うんだけど。なんて断れば角が立たないかな……」
「正直に言えばいいじゃないか。『体調が悪いから、予定通りでお願い』って」
祥吾の意見はもっともです。でも、沙織は「えー、なんで?どっか悪いの?大丈夫?私、いいお医者さん知ってるよ!」と、善意という名のマシンガントークで深掘りしてくるのが目に見えています。彼女との過去を思い返すと、さらに心が沈みます。

