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再会のはずが…ドアを開けられなかった私|夫が家出した話

再会のはずが…ドアを開けられなかった私|夫が家出した話

夫婦喧嘩をきっかけに家を出た恒一は、離婚届を残し「一緒にはいられない」と里奈に告げる。突然の出来事に戸惑う中、数日後、里奈のもとに思いがけない出来事が起きて...。

目の前に現れた夫と、開けられないドア

インターホン

インターホンが鳴ったのは、日が落ちた夕方のことだった。

「……誰だろう」

悠斗とリビングで過ごしていた私は、何気なく立ち上がる。
けれど、モニターを見た瞬間、体が固まった。
そこに映っていたのは、恒一だった。

「……え……」

心臓が、ドクンと大きく鳴る。
数日ぶりに見る夫の姿。
変わらないはずなのに、どこか遠く感じてしまう。

インターホンが、もう一度鳴る。
指先が、震えていた。

ドアの前まで行く。
でも、鍵に手をかけたまま、動けない。

「このままだと、手を出してしまうかもしれない」

あのメッセージの言葉が、頭の中でよみがえる。

(……開けて、大丈夫なの?)

自分でもわからなかった。
会いたい気持ちはある。話もしたい。
でも同時に、怖いと思ってしまっている自分がいる。
こんなふうに思ってしまうこと自体が、ひどく悲しかった。

しばらくすると、インターホンは鳴らなくなった。
そっとモニターを見ると、恒一はもうそこにはいなかった。
私は、その場にへたり込んだ。

(……私、何やってるの……)

会えたはずなのに。
話せたかもしれないのに。
私は自ら、その機会を手放してしまった。

届いた優しさと変わらない現実

紙袋

それから数日後。
買い物から帰ってきた私は、玄関の前で足を止めた。

「……これ……」

ドアの横に、紙袋が置かれていた。
中を覗くと、私が欲しかったヘアアイロンに悠斗が欲しがっていたおもちゃが入っていた。
その瞬間、思わず息が詰まる。どちらも欲しがっていたことを知っていたのは、たった1人しか思い浮かばなかったからだ。

「……恒一……?」

直接会うことはなくても、こうして来ていたんだ。
気づかなかっただけで、何度か来ていたのかもしれない。

胸の奥が、じんわりと熱くなる。
まだ、家族のことを考えてくれている。
そう思えたことが、少しだけ嬉しかった。

すぐにスマホを取り出す。

《ありがとう。家の前の紙袋、恒一だよね?》
《悠斗、喜ぶと思う。私も覚えててくれて嬉しかった》
《この前は来てくれたのに、出なくてごめん。また、ちゃんと話せないかな?》

送信ボタンを押したあと、私は画面を見つめたまま、しばらく待った。
数分後、返信が届く。

《受け取ってくれてよかった。ボーナス入ったから》
《でも、離婚の気持ちは変わらない》

その一文を見た瞬間、胸がぎゅっと締めつけられる。

「……なんで……」

思わず声が漏れた。

配信元: ママリ

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