児童館で悠真の言動について指摘を受け、「翔くんもやっていたから」と同調を口にした息子に戸惑う真帆。そんな現在に至るまでを振り返る中で、かつて悠真が翔にいじめられていた過去と、その後「仲良くなった」と語るようになった経緯が思い出される。
「行きたくない」から始まった違和感
「行きたくない……」
ある朝、悠真がぽつりとそう言った。
「え?どうしたの?」
思わず聞き返すと、悠真は視線を逸らしたまま、小さく首を振る。
「……なんでもない」
そう言いながらも、明らかに様子がおかしい。
それまで、学校や児童館を嫌がることなんてほとんどなかったのに。
その日を境に、朝になると同じ言葉を繰り返すようになった。
「行きたくない」
「今日、休んじゃダメ?」
理由を聞いても、はっきりとは答えてくれない。
けれどある日、ようやく口にした言葉で、すべてが繋がった。
「……翔くんが、いやなんだ」
その一言に、胸がざわつく。
「翔くん?どうして?」
「……いじわる、してくる」
ぽつり、ぽつりと話すその内容は、決して軽いものではなかった。
「仲良くなった!」その言葉に安心してしまった
物を取られたり、嫌なことを言われたり。
時には、仲間外れのようなこともされているらしい。
「もっと早く言ってくれればよかったのに……」
そう言いながらも、どこかで気づけなかった自分を責めていた。
すぐに担任の長谷川先生へ相談した。
事情を話すと、先生は真剣に耳を傾けてくれた。
「学校でも様子を見てみますね」
そう言ってくれたものの、不安が消えるわけではない。
その後も、悠真からはぽつぽつと訴えが続いた。
「今日も言われた」
「一緒に遊んでくれなかった」
そのたびに胸が痛んだ。
児童館でも同じようなことがあったと聞き、私は何度も悩んだ。
どうすれば、この子を守れるのか。どうすれば、安心して過ごせるようになるのか。
答えの見えないまま、時間だけが過ぎていった。
そんなある日。
「ママ、今日ね!」
学校から帰ってきた悠真が、珍しく明るい声を上げた。
「翔くんと仲良くなった!」
「……え?」
思わず聞き返す。
あれだけ嫌がっていた相手の名前が、こんなにも嬉しそうに出てくるなんて。
「一緒に遊んだんだよ。もう大丈夫!」
満面の笑みでそう言う悠真を見て、私は戸惑いながらも安堵した。
「そっか……よかったね」
本当に、それでいいのかという迷いはあった。
でも、本人が笑っているのなら、そう思った。

