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「障がいが重いほど入れない」放課後デイの矛盾…2年かけて空き探す母「就職氷河期を思い出した」

「障がいが重いほど入れない」放課後デイの矛盾…2年かけて空き探す母「就職氷河期を思い出した」

●最低基準人員で回す効率重視で、障がいの重い子が敬遠される

なぜ障がいが重いと、放課後デイに入りにくいのか。それは事業者への報酬制度と関係がある。

現行の制度では、事業者の報酬は利用者の数や時間などに応じた「基本報酬」に、利用する子の障がいの程度や支援員の人数などで加算がつく仕組みだ。

放課後デイ事業者でつくる「全国放課後連」の事務局次長・真崎尭司さんが、こう説明する。

「利用する子10人に対して、支援員2人がつく10対2の最低基準人員が定められています。でも、障がいの重い子は、1対1での支援が必要な場合もあり、10対2ではとても対応できません」(真崎さん)

支援員を増やしたり、障がいの重い子を受け入れたりすれば確かに加算はつくが、人件費や家賃が上がる中ではとてもカバーできない。介助負担やトラブル発生のリスクが高いということもあるだろう。

「障がいの軽い子を多く受け入れて、最低基準人員の10対2で回すのが最も経営効率がいいんです。結果、障がいの重い子が入りにくい状況になっています」(真崎さん)

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もちろん国の最低基準より手厚く支援員を配置し、重い障がいの子をサポートする事業所もある。全国放課後連に加盟する事業所は、平均で利用者10人に対し、支援員6人を配置している。ただ、そうした事業所は少ないのが現状だ。

また、真崎さんによると、空きがあっても障がいの程度が重いからという理由で、申し込みを断る事業者もいるそうだ。

放課後デイの事例ではないが、前述の斎藤さんも、湊人さんが未就学児のときに利用していた児童発達支援から突然、「出席率」を理由に「やめてほしい」と言われた経験がある。サポートを求め、通っていた別の事業所にこのことを話したところ、そこの利用も断られてしまったそうだ。

「寄り添いの言葉をかけてくれるのかなと思ったら真逆でした。お休みは数回だったので、本当の理由は『実際に入れてみたら手がかかる子だったから』じゃないかと疑っています。他で拒否された子は高リスクだから断るという運用もあるのかもしれません」(斎藤さん)

法令上、児童発達支援や放課後デイなどは、適切な理由なしにサービスの提供を拒んではならないとされており、出席率や障がい特性などを理由に断ると、違法と判断される可能性がある。ただ、ネットには斎藤さんのような事例がいくつも報告されている。

「気持ち的に『納得』は難しいけれど、事業所もボランティアじゃない。障がいの重い子をみるのが大変なのは分かるし、報酬が発生しないと新規参入も増えず、受け入れてもらえる子の数が限られてしまうのも『理解』はできます。だからこそ、もっと制度でどうにかならないのかなと思います」(斎藤さん)

●「家でテレビ見るしかない時代もあった」草の根で始まった支援

障がいの重い子ほど放課後デイに入れず、斎藤さんのように困っている保護者は珍しくない。ただ、放課後デイが制度化される前はさらに大変な状況だった。これでも少しずつ改善はしてきているのだ。

全国放課後連の真崎さんは20年以上、障がいのある子の放課後支援に携わってきた。

「放課後の居場所がない時代は、子どもたちは学校と家との往復だったんです。保護者が見守る中、テレビを見て過ごすような感じですね。保護者と1対1なので、友達関係を築けない子も多かった。

保護者にとっても親同士のつながりを持てず、悩みを抱えたまま、子育ての喜びを感じづらい状況でした。孤立した親が子どもを殺してしまう不幸な事件もありました」(真崎さん)

そうした状況から、1970年代後半に東京で草の根での放課後支援が始まった。東京の取り組みが全国に広がり、自治体が補助金を出し始めるようになった。

「障がいのある子が友達と過ごしたり、公園に行ったりという機会が各段に増えました」(真崎さん)

2012年に制度化されてからは、事業所が安定した財源を確保できるようになり、それに伴い参入事業者も増えた。

ただ、時代の変化とともに、共働きやひとり親の世帯も増えた。国や自治体が少子化対策に力を入れる中、安心して子を生み育てられる社会という観点からも、さらなる拡充が求められている。

全国放課後連は、放課後デイを所管するこども家庭庁に年2回、要望書を出している。

2025年は、基本報酬だけで事業所運営が成り立つように求める報酬制度の見直しや、子どもの障がいの度合いによって利用を拒否しないよう事業所に周知徹底を求めることなどを要望した。

当事者の斎藤さんも「保護者仲間」や「後輩」が自分のような苦労をしないよう制度のさらなる改善に期待する。

「現在5カ所に預ける大変さはありますが、どこもスタッフの方が一生懸命やってくれて、ありがたく思っています。送迎サービスを利用できたり、職場の理解もあったりして、私はまだ恵まれているほうです。でも、支援とつながれず孤立する家庭や、職場の理解が得られず離職する方もいます。

特別支援学校の中に学童ができたり、放課後デイの基本報酬で障がいの程度による重みづけが見直され、支援員の待遇が改善したりするといいなと思います」(斎藤さん)

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