児童館での言動をきっかけに、悠真が翔に同調していることを知った真帆。過去には翔からのいじめに悩んでいたにもかかわらず、「仲良くなった」と語るようになって以降、言葉遣いに変化が見られていた。そんな経緯を踏まえ、改めて悠真に向き合う中で、その行動の裏にある理由を問いかける。
「ダメ」だけでは届かない違和感
「悠真、それはダメだよ」
できるだけ落ち着いた声で、そう伝えた。
さっきの話。
児童館での様子を聞いたあと、私は改めて悠真に向き合っていた。
悠真は少しだけうつむいて、「……うん」と小さく頷く。
その表情には、反省の色も見える。でも同時に、どこか納得しきれていないような、そんな曖昧さも残っていた。
「お友だちに強い言い方したり、無視したりするのは、よくないことだよ」
言葉を選びながら、ゆっくりと伝える。
悠真は黙ったまま聞いている。
けれど、何か言いたそうに、ちらちらとこちらを見ているのがわかった。
「……どうして、そうしちゃったの?」
私は少し間を置いてから、そう問いかけた。
「翔くんがやってたから、って言ってたよね?」
「……うん」
「でも、それだけじゃないよね?」
その瞬間、悠真の表情が、わずかに揺れた。
「やられる側になりたくなかった」本音
「……だって」
ぽつりと、言葉がこぼれる。
「同じことしなかったり、一緒にしてないと……」
言い淀みながら、続ける。
「仲間にしないからって言われるし……」
その声は、さっきまでとは違っていた。
少しだけ早口で、どこか焦っているような。
「それで……蹴られたりもするし……」
「……え?」
思わず、聞き返してしまう。
悠真は顔を上げないまま、言葉を重ねた。
「言葉でも、喧嘩でも……勝てないし!」
その一言に、胸が強く締めつけられる。
必死に、何かを守ろうとしているような声だった。
「だから……一緒にやるしかなくて……」
最後の方は、ほとんど聞き取れないくらい小さな声だった。
何も言えなかった。
ただ「ダメ」と伝えるだけでは足りなかったことに、ようやく気づく。
この子は、ただ真似していたわけじゃない。
そうしなければ、自分がやられる側になるかもしれない。
そう感じて、選んでしまった行動だった。

