正しさと守ることの間で揺れる
「……そうだったんだ」
やっとの思いで、それだけ言う。
頭の中が、ぐるぐると回っていた。
守りたかったはずのわが子が、今度は誰かを傷つける側に回っている。
でもその裏には、確かに“怖さ”があった。
その日は、それ以上うまく言葉をかけることができなかった。
「明日、またちゃんと話そうね」
そう言うのが精一杯だった。
悠真は「うん」と頷いたけれど、その顔には、まだ不安が残っているように見えた。
翌日。家事をしながらも、昨日の悠真の言葉が何度も頭をよぎる。
──仲間にしないからって言われるし
──蹴られたりもするし
あのときの表情。
あの声。
思い出すたびに、胸がざわつく。
「……どうしたらいいんだろう」
思わず、独り言がこぼれる。
翔くんのこと。その関係。
正直に言えば、翔くんのお母さんに相談することも考えた。
でも...顔が浮かぶ。
いつも感じのいい人で、会えば世間話もする。
お互いに子育ての大変さを話したこともある。
だからこそ、言い出しにくい。
「あなたの子が」と責めるようになってしまわないか。
関係が崩れてしまわないか。
そんな不安が、足を止める。
ふと、昨日のやり取りを思い出す。
悠真は、自分のことで精一杯だった。
怖かったこと。
嫌だったこと。
それをどうにか回避するために、必死だった。
だからこそ「ダメ」という言葉だけでは、届いていない。
正しさを伝えることと、守ること。
その両方を、どうやってやればいいのか、答えが見えない。
「……どう伝えればいいの……」
悠真にとって、本当に必要な言葉は何なのか。
考えても、考えても、はっきりとは浮かばなかった。
ただひとつわかるのは、今ここで、ちゃんと向き合わなければいけないということだけだった。
あとがき:“加害”の裏にあった、もうひとつの理由
子どもが誰かを傷つけてしまったとき、「やめなさい」と伝えることは大切です。しかしその行動の裏にある理由まで見なければ、本当の意味での解決にはつながりません。
本作では、“加害”の奥にある「恐怖」や「自己防衛」という側面を描いています。親として、正しさを伝えることと子どもを守ること。その両立の難しさに、どう向き合っていくのかを考える回です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

