ヨハネス・フェルメール《ディアナとニンフたち》, Public domain, via Wikimedia Commons.
フェルメールほどの巨匠であっても、実は描きたいものを諦めていたのかもしれません。鍵となる作品《ディアナとニンフたち》を軸に、画家の本音を探っていきましょう。
フェルメールの数少ない神話画《ディアナとニンフたち》
まず、《ディアナとニンフたち》がどんな絵画なのか?
本作はフェルメールがキャリアの初期に描いた作品。室内での人々の暮らしを描く作風に転じる前には、このように神話や聖書の場面を描いていました。
ヨハネス・フェルメール《ディアナとニンフたち》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
本作の真ん中にいる、黄色い服を着た女性が月と狩猟の女神ディアナです。周りにいるのは彼女に仕えるニンフ(森の精)で、うち1人がディアナの足を洗っています。
神話の登場人物を描いた作品ではありますが、描かれた場面は「足を洗う」という何気ないシーン。のちのフェルメールの作風、つまり人々の日常を描く画家への転向を予感させる作品とも言われます。
結婚きっかけでカトリックに改宗
ヨハネス・フェルメール《マルタとマリアの家のキリスト》, Public domain, via Wikimedia Commons.
同じく初期に描かれた《マルタとマリアの家のキリスト》は宗教画ですし、駆け出しの頃のフェルメールは聖書や神話を題材に絵を描いていました。宗教的なモチーフや物語に興味があったのだろうと考えられます。
宗教画や神話画は、西洋美術ではよく見る絵画ジャンルです。しかし、「キリスト教」にはこれらに寛容な教派とそうでない教派がありました。当時のヨーロッパで寛容派だったのが、ローマ教皇をトップとする「カトリック」です。布教のためにマリアやキリストなどの絵が描かれるようになり、宗教画というジャンルが確立しました。
ヨハネス・フェルメール《聖プラクセディス》, Public domain, via Wikimedia Commons.
フェルメールはもともとプロテスタントという別の教派でしたが、結婚を機にカトリックに改宗。妻の実家が裕福なカトリックの家だったため、そちらに合わせて改宗したと考えられています。
上辺だけ妻の実家に合わせたのか、心の底からカトリック教徒になったのか……本音はフェルメールにしかわかりません。ですが、義実家のおかげで生活にゆとりができ、これからは腰を据えて絵を描けるぞ! となったとき、彼が題材にしたのは神話や聖書の物語でした。
