肥満やメタボ要因で進行する「メタボリック肝硬変」。飲酒習慣がなくても発症し、自覚症状がないまま不可逆的な肝硬変や肝がんへ至る恐れがあります。「メタボドミノ」を食い止めるための早期発見の重要性と、基礎代謝を上げる筋トレから始める改善アプローチについて三田医院院長の奥山秀平先生に聞きました。

監修医師:
奥山 秀平(三田医院)
1999年3月杏林大学医学部卒業。杏林大学第3内科(消化器内科、糖尿病代謝内科)入局。国立横浜病院(現国立横浜医療センター)消化器内科、焼津市立総合病院代謝内分泌内科、杏林大学第3内科(消化器内科)聖路加国際病院消化器内科を経て2025年5月三田医院を開院。
メタボリック肝硬変のメカニズム
編集部
「メタボリック肝硬変」とは、具体的にどのような病気ですか?
奥山先生
メタボリック肝硬変とは、肥満、糖尿病、脂質異常症などのメタボリック要因が長期間続くことで脂肪肝が進行し、肝臓が硬く変化してしまう状態です。特に代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)が悪化して肝炎を引き起こし、最終的に肝硬変へ至るケースが増えています。飲酒をほとんどしない人でも起きるため「サイレント肝障害」と呼ばれ、放置すると肝不全や肝がんのリスクが高まります。
編集部
脂肪肝とは何が違うのですか?
奥山先生
メタボリック肝硬変は炎症と線維化が進み、肝臓の働きが著しく低下した状態です。一方の脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまっただけの段階を指します。線維化とは肝臓がダメージを受け、修復のために硬い組織(線維)が増えてしまう状態です。脂肪肝は見直せば改善しますが、肝硬変は元に戻らない場合が多く、進行すると命に関わる危険性もあります。
編集部
日本でも増えているのですか?
奥山先生
はい。生活習慣の欧米化により、飲酒を伴わない肝硬変が増加しています。特にメタボ人口の増加と並行して患者数が増えており、医療現場でも大きな課題となっています。
どんな人がなりやすいのか? 症状は?
編集部
メタボリック肝硬変になりやすい人の特徴を教えてください。
奥山先生
肥満、特に内臓脂肪型の肥満がある人は要注意です。また、糖尿病や脂質異常症、高血圧など「メタボの三要素」を複数抱える人はリスクが高くなります。痩せていても筋肉量が少なく、内臓脂肪が多い“隠れ肥満”の人も発症する可能性があります。
編集部
肝臓の障害と肥満やメタボはどのように関係しているのですか?
奥山先生
内臓脂肪が増えると、肝臓に炎症を起こす物質(サイトカイン)が分泌され、脂肪肝から脂肪性肝炎へと進展します。肥満レベルが高いほど、脂肪肝のリスクも高くなります。
編集部
特に肥満は要注意なのですね。
奥山先生
医療現場には「メタボドミノ」という考え方があります。生活習慣の乱れをきっかけに、健康障害がドミノ倒しのように連鎖していく過程を示した概念です。肝臓の障害についていえば、まず出てくるのが脂肪肝です。脂肪肝は自覚症状がほとんどないため見過ごされやすいですが、ここで食い止められないと次に脂質異常症や高血圧、糖尿病といった生活習慣病へと進行します。さらに状態が悪化するとメタボリック肝硬変に至る場合もあります。そのため脂肪肝の段階で気づき、生活習慣を改善してドミノ倒しを食い止める対応が極めて重要です。
編集部
脂肪肝やメタボリック肝硬変になると、どんな症状が表れますか?
奥山先生
初期は無症状ですが、肝硬変まで進行すると倦怠感、食欲低下、むくみ、皮膚のかゆみ、腹部のハリなどが表れます。重症になると黄疸、腹水、意識障害などを起こす場合もあり、緊急対応が必要です。さらには肝がんのリスクも高まります。
編集部
女性や高齢者でも発症しますか?
奥山先生
はい。特に閉経前後の女性は脂肪代謝が変化し、脂肪肝から肝炎へ進みやすくなります。高齢者でも筋肉量の低下に伴い発症リスクが高くなります。

