限界を迎えた恵美を、美幸は「関係を良くするため」と説得しカウンセラーのもとへ連れて行く。「あなたは悪くない」という言葉に涙する恵美。GPS監視や罵倒、搾取の事実が浮き彫りになり、10年かけて麻痺していた彼女の感覚が、ようやく客観的な事実として目覚め始める。
妹を説得し、カウンセリングを受けてもらうことに
恵美から再び連絡があったのは、その一週間後でした。声は以前よりもさらに細く、消え入りそうでした。
「お姉ちゃん……もう、どうやって息をすればいいのか分かんない……。サトルくんと離れるのは怖いけど、一緒にいるともっと怖い……」
私は恵美の家に向かい、サトルが不在の隙に彼女を連れ出しました。
「恵美、別れなくていい。別れろなんて言わないから、一度だけお姉ちゃんの知り合いの先生とお話ししてみない? サトルくんとの関係を良くするための相談だと思っていいから」
嘘も方便でした。まずは彼女を専門家の前に座らせること。
「あなたは悪くない」その言葉に涙が止まらない妹
向かったのは、DV被害者の支援も行っているカウンセラーの元です。
「恵美さん、あなたは悪くないんですよ」
カウンセラーのその一言に、恵美は堰を切ったように泣き出しました。
「でも、私が彼を怒らせるようなことを……掃除ができていなかったり、返事が遅かったり……」
「それは、殴られていい理由にはなりません。相手を大切に思うなら、言葉で伝えるべきです。暴力は、あなたをコントロールするための道具に過ぎないんです」

