肩が痛くて腕が上がらない、夜中に痛みで目が覚めてしまうなど、日常生活に大きな支障を来すのが、いわゆる四十肩・五十肩です。よく聞く病名ではあるものの、「自然に治るから様子を見ていればよい」と言われることも少なくありません。そこで、四十肩・五十肩の正体から治療の考え方、近年注目されている治療法を、医療法人社団全心会理事長で、ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック 整形外科部長の守重先生に聞きました。
※2026年1月取材。

監修医師:
守重 昌彦(ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック)
神戸大学医学部医学科卒業。東京大学医学部整形外科学教室入局後、関連病院などで整形外科領域の診療経験を積む。2018年、東京都立川市に「ぜんしん整形外科立川スポーツリハビリクリニック」を開院。地域に根ざした診療を行っている。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本肩関節学会、日本臨床スポーツ医学会、日本人工関節学会、日本骨粗鬆症学会の各会員。
四十肩・五十肩の基本情報
編集部
四十肩や五十肩とは、どのような状態を指すのでしょうか?
守重先生
一般的には、明らかな外傷や原因がないにもかかわらず、肩関節に痛みや動かしにくさが生じる状態を指します。正式には「癒着性関節包炎(凍結肩)」と呼ばれ、40代・50代に多く見られることから、「四十肩」「五十肩」という名称で知られています。
編集部
四十肩と五十肩に違いはあるのですか?
守重先生
本質的な違いはありません。発症する年齢によって呼び分けられているだけで、病態や治療の考え方は同じです。整形外科の診療現場では「四十肩」という呼び方はあまり用いられず、発症のピークが50代にあることから、「五十肩」と呼ばれることが多いのが実情です。40代など比較的若い年代で発症した人への配慮から四十肩という名称が広まったのではないかとも考えられています。四十肩・五十肩は、いずれも正式な診断名ではありません。
編集部
五十肩が起こる原因は何なのでしょうか?
守重先生
明確な原因は現在の医学でも分かっていませんが、肩関節の最も奥にある関節包という組織に炎症が起こった結果、組織が線維化して硬くなってしまうことが中心にあると考えられています。炎症が強い時期に動かしたときに、強い痛みや夜間痛が出ます。
編集部
主な症状について教えてください。
守重先生
肩を動かしたときの痛みや、腕が上がらない、背中に手が回らないといった可動域制限が代表例です。特に、夜間安静にしていても強い痛みが出る夜間痛は、生活の質を大きく下げる原因になります。
五十肩の経過と、治療のゴールを教えて!
編集部
「五十肩は自然に治る」という話を聞くこともありますが、本当でしょうか?
守重先生
自然に改善する人がいるのは事実ですが、全ての人が当てはまるとは限りません。過去の研究によると、約半数は2年たっても何らかの症状が残ったとされています(J Bone Joint Surg Am. 1992 Jun;74(5):738-46.)。必ずしも「放っておけば治る」というわけではありません。
編集部
五十肩になった場合、早めに治療を検討した方がよいのでしょうか?
守重先生
はい。治療のゴールは「最終的に治る」だけではありません。強い痛みや夜間痛を早く和らげること、治るまでにかかる期間を短くすることが非常に重要なのです。「いつか治るから」と我慢を続け、生活の質が低い期間を長く過ごすべきではありません。
編集部
どのような治療を行うことが多いのでしょうか?
守重先生
発症初期で炎症が強い時期には、内服薬や関節腔内への注射によって炎症をコントロールします。夜間痛で何週間もつらい状態が続いていた人でも、適切な治療を行えば数日から2週間ほどで痛みが軽減することが期待できます。

