強皮症は、皮膚が硬くなるだけでなく、血管や免疫の異常が関わる病気です。なかでも爪の症状として気が付きやすいのは、爪そのものの変形より、甘皮の部分や爪の根元にみられる小さな出血点、毛細血管の異常です。見た目の変化は小さくても、血流の低下を反映していることがあります。爪の変化を見たときに何が起きているのかを知っておくと、受診時にも状態を伝えやすくなります。

監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
【資格】
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本リウマチ学会 リウマチ専門医・指導医・評議員
日本リウマチ学会 登録ソノグラファー
日本リウマチ財団 登録医
日本アレルギー学会 アレルギー専門医(内科)
日本臨床免疫学会 免疫療法認定医
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
日本エイズ学会 認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本母性内科学会 母性内科診療プロバイダー
身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害)
インフェクションコントロールドクター
博士(医学)
診療科目
一般内科、リウマチ・膠原病内科、アレルギー科、感染症科
強皮症でみられる爪の症状

強皮症とはどのような病気ですか?
強皮症は、皮膚や血管、内臓に線維化や血流障害が起こる病気の総称です。大きく、全身性強皮症と限局性強皮症に分かれます。全身性強皮症は手指の皮膚硬化に加えて、レイノー現象や爪郭部毛細血管異常、指先の潰瘍などを伴うことがあります。皮膚だけでなく、肺や消化管などに影響が及ぶこともあります。
一方、限局性強皮症は境界がはっきりした皮膚硬化が身体の一部に生じる病気で、全身性強皮症とは別の病気です。名前は似ていますが、病変の広がり方や重視される症状は同じではありません。
参照:
『全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
『限局性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
強皮症になると爪にどのような症状が現れますか?
強皮症で診察上特に重視されるのは、爪そのものより、爪の周囲に出る変化です。代表的なのは、甘皮にみられる赤色や黒色の小さな点である爪上皮出血点です。見た目には黒い点のようにみえることがあります。加えて、爪の根元の毛細血管が広がる、蛇行する、減って見えにくくなるといった爪郭部毛細血管異常がみられます。爪の周りが赤く見える爪囲紅斑を伴うこともあります。血流障害が強い場合は、指先の潰瘍やへこんだ傷跡が目立ち、結果として爪の形や色が変わって見えることもあります。つまり、強皮症の爪の症状は、爪そのものの病気というより、指先の血管障害が爪の周囲に表れている状態と考えるとわかりやすくなります。
参照:『皮膚科Q&A Q8 血管障害とは何ですか?』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
全身性強皮症、限局性強皮症のいずれでも爪に病変はみられますか?
爪周囲の血管病変が目立ちやすいのは、全身性強皮症です。全身性強皮症では、爪上皮出血点や爪郭部毛細血管異常が診断でも重視されます。これに対して限局性強皮症は、全身性強皮症でみられるレイノー現象や手指潰瘍などの血管障害を伴わないとされています。そのため、強皮症に特徴的な爪周囲の所見という意味では、全身性強皮症でみることが多いと考えると理解しやすいでしょう。
限局性強皮症で手指の近くに皮膚硬化があっても、全身性強皮症と同じ意味合いで爪の血管所見をみるわけではありません。病名の似ている二つの病気を区別して考えることが大切です。
参照:
『全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
『限局性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
なぜ強皮症になると爪に変化がみられるのですか?
主な理由は、指先の細い血管に障害が起こり、血の巡りが不安定になるためです。寒さや緊張をきっかけに血管が強く縮むレイノー現象が続くと、指先や爪の周囲に十分な血流が届きにくくなります。その結果、甘皮の部分に小さな出血点が出たり、毛細血管の形が乱れたりします。さらに皮膚や血管の線維化が加わると、傷が治りにくくなり、色の変化や潰瘍、傷跡が残ることがあります。診察では、肉眼で甘皮の黒い点を確認したり、拡大鏡や顕微鏡で爪郭部の毛細血管を観察したりして、血管障害の程度をみます。爪の変化は、手指の末梢循環の状態を知る手がかりの一つです。参照:『皮膚科Q&A Q8 血管障害とは何ですか?』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
強皮症|爪の治療

強皮症で生じた爪の変化はどのように治療しますか?
爪だけを切り離して治療するというより、原因になっている血流障害や皮膚病変を治療します。全身性強皮症では、レイノー現象や指先の潰瘍に対する治療が中心です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、レイノー現象にはカルシウム拮抗薬が推奨されています。潰瘍や感染を伴うときは、自己処置で済ませず、創の処置や感染の評価が必要です。限局性強皮症では、活動性のある皮膚病変に外用治療を行い、病変が広い場合や深い場合には、メトトレキサートやステロイドを含む全身治療が検討されます。爪の変化が気になる場合でも、治療の中心は背景にある病勢のコントロールです。見た目だけで判断せず、全身性強皮症なのか、限局性強皮症なのかを踏まえて治療方針が決まります。
参照:
『全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
『限局性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン』(公益社団法人 日本皮膚科学会)
強皮症でみられる爪の黒い点は治療で消えますか?
黒い点の正体が爪上皮出血点であれば、ずっと同じ場所に固定して残るとは限りません。全身性強皮症の診断基準でも、爪上皮出血点は出現と消退を繰り返す所見として扱われています。そのため、血流障害の管理が進むと目立ちにくくなることがあります。ただし、病勢や血流の状態によっては再び現れることもあります。急に増えたときや、痛み、潰瘍を伴うときは、血流障害の悪化も考えて診てもらう方がよいでしょう。
強皮症で変化した爪の色はもとに戻りますか?
爪の色の変化が一時的な血流低下によるものであれば、血流が戻ると色調も戻ることがあります。小さな出血点も、時間の経過で目立ちにくくなることがあります。一方で、慢性的な血流障害が続いた場合や、潰瘍、傷跡を伴った場合は、完全には元に戻らないことがあります。どこまで回復するかは、色の変化の原因が一過性の循環低下なのか、長く続いた組織障害なのかで変わると考えられます。爪は少しずつ伸びるため、見た目の変化にも時間差があります。治療を始めてすぐに爪の色が整うとは限らないため、短期間で判断しないことも大切です。

