子どもが「膝が痛い」と訴えたとき、「成長痛かな?」と考える保護者は少なくありません。しかし、その痛みの背景にスポーツ障害が隠れていることもあります。今回は、「オスグッド病」の初期サインについて、医療法人社団スポーツメディカル 八王子スポーツ整形外科院長の間瀬先生に話を聞きました。
※2026年3月取材。

監修医師:
間瀬 泰克(医療法人社団スポーツメディカル 八王子スポーツ整形外科)
1986年に日本医科大学を卒業後、スポーツ整形外科を志し、早くからスポーツ現場を中心に多くの競技に携わる。2003年に八王子スポーツ整形外科を開設し、院長に就任。医療法人社団スポーツメディカル理事長。日本膝関節学会評議員、日本スポーツ整形外科学会代議員、日本臨床スポーツ医学会代議員、日本整形外科学会専門医・スポーツ認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本オリンピック委員会強化スタッフ。元・アイスホッケー日本代表チームドクター。
成長痛とどう違う? まず知っておきたい基礎知識
編集部
子どもの膝の痛みには、どのような原因が考えられますか?
間瀬先生
大きく分けると、打撲や捻挫などの外傷によるものと、成長期特有のスポーツ障害があります。特に10〜15歳前後でジャンプやダッシュ、キック動作の多い競技をしているお子さんによく見られるのが「オスグッド病」です。成長痛と混同されることがあるものの病態としては別で、成長期の脛骨粗面(けいこつそめん/すねの骨の上端・膝のお皿の下に位置する、隆起した部分)に繰り返しけん引ストレスがかかることで起こる障害です。
編集部
成長痛とは、どう違うのでしょうか?
間瀬先生
いわゆる成長痛は、はっきりした炎症所見がなく、夕方から夜にかけて両側に痛みを訴えることが多いとされています。一方、オスグッド病は膝のお皿の下にある脛骨粗面に局所的な痛みが出て、押すと強く痛みます。腫れや熱感を伴うこともあり、明確な圧痛点がある点が大きな違いです。
編集部
なぜ、脛骨粗面に痛みが出るのですか?
間瀬先生
脛骨粗面には、大腿四頭筋という強い筋肉が膝蓋腱(しつがいけん)を介して付着しており、ジャンプやダッシュを繰り返すと、そのけん引力が成長途中の骨端部に集中し、炎症や微細な損傷が起きやすくなるからです。成長期は骨がまだ成熟していないため、ジャンプやダッシュによるストレスの影響を受けやすいのです。
編集部
どのような競技で多く見られますか?
間瀬先生
サッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上競技など、走る・跳ぶ動作が多い競技でよく見られます。ただし、競技種目だけでなく、練習量の多さ、柔軟性の不足、フォームの癖、後方重心の動き方なども関係します。
見逃してはいけない“初期サイン”
編集部
初期段階では、どのような症状が出るのでしょうか?
間瀬先生
多くは「運動中だけ痛い」という訴えから始まります。安静時は問題ないため軽視されがちですが、徐々に「押すと強く痛む」「膝下が少し出っ張ってきた」といった変化が出てきます。加えて、「走る・跳ぶ・しゃがむといった動作や、階段の上り下りで痛い」「練習後に痛みが残る」といった症状も大事な初期サインです。
編集部
症状が出た後は、しばらく様子を見ていても大丈夫ですか?
間瀬先生
我慢してプレーを続けると炎症が慢性化し、痛みが長引きやすくなります。成長が止まった後も骨の隆起が残ることがある上に、痛みをかばうことでフォームが崩れ、別の部位に負担が広がることもあります。早い段階で評価を受け、練習量や運動内容を調整することが重要です。
編集部
受診の目安を教えてください。
間瀬先生
「2週間以上痛みが続く」「腫れや熱感がある」「片側だけ強く痛む」「日常生活でも痛みを感じるようになってきた」というケースは、受診をおすすめします。単なる疲れや成長痛として済ませず、体が出している警告サインと考えてください。
編集部
医療機関では、どのような評価・検査を行いますか?
間瀬先生
患部を押したときの痛みや腫れの確認に加え、股関節や足関節の可動域、筋力バランス、柔軟性、姿勢、走る・しゃがむ・跳ぶといった動作の癖も把握します。また、X線(レントゲン)で脛骨粗面の変化を確認することもあります。ただし、初期には画像で目立った変化が出ないこともあるため、診察と機能評価が非常に大切です。

