「通報した」男性から告げられた事実
「理人! 理人!」
私は雪の上に崩れ落ちるようにして、理人を抱きしめました。理人の体は氷のように冷たく、ガタガタと震えています。
「……ママぁ、ママぁ……! おえっ、うわあああん!」
理人は私の服をちぎれんばかりに掴み、顔を埋めて泣き続けました。
「お母さんですか?」
低い、落ち着いた声が頭上から降ってきました。見上げると、傘を差した中年の男性が厳しい表情で私を見ていました。
「は、はい……すみません、本当にすみません! すぐに戻るつもりで……」
「この子、2〜3分はこの雪の中で泣いていましたよ。家の中から声が聞こえたのかと思ったら、自分でドアを開けて出てきたみたいで。危うく道路に出るところでした」
男性の言葉に、心臓が止まりそうになりました。
道路に出る? もし、雪で視界の悪い車が通りかかっていたら?
「……ありがとうございます。本当に、ありがとうございました」
「いえ。ただ、……あまりにも泣き方が尋常ではなかったので。この寒さの中ですし、警察に通報させてもらいました」
通報。 その言葉の重みに、頭の中が真っ白になりました。
「えっ、警察……ですか?」
「はい。今の時代、何があるかわかりませんよね。実際に、放置されていたのは事実ですから。あ、パトカーが来ましたよ」
この男性は、たまたま家の近くを通りかかり、理人の泣き声に気づいてくれたようです。子どもが飛び出してしまわないよう、見守ってくれていたのです。まさに、子どもの命の恩人です。
ですが、「通報」という言葉で頭が真っ白に。自分が子どもを「放置した」事実が重くのしかかります…。
誰でも、慌ただしい子育ての中で「5分だけなら」が、よぎったことがあると思います。決して母親が怠慢だったのではなく、ひとりで子育てに奮闘していたからこそ、起きてしまった事態でした。「たった5分、されど5分」が、心に深く刻まれる作品です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ももこ
(配信元: ママリ)

