「排便したら血が混じっていた」――。血便自体は珍しい症状ではなく、気づいても「痔(じ)だろう」と自己判断して様子を見てしまう人は少なくありません。しかし、血便の原因は痔だけではなく、大腸がんや炎症性腸疾患などの重篤な病気である可能性もあります。特に初期の大腸がんは症状に乏しく、血便が数少ないサインとなることもあるため注意が必要です。血便の原因や見分け方、ただちに受診すべき重大な症状について、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長の柏木宏幸先生に詳しく解説してもらいました。
※2026年4月取材。

監修医師:
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)
2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。
血便が出たら痔? それとも大腸がん? まず知っておきたい原因疾患
編集部
血便が出ると「痔かな」と気楽に構える一方で、大きな病気のサインではないかと心配にもなります。実際にがんが原因のケースはどのくらいあるのでしょうか?
柏木先生
血便を主訴に外来を受診した患者さんのうち、大腸がんが原因であるケースは約2〜3%程度とされています。つまり、血便の大多数は、いぼ痔や切れ痔といった良性疾患が原因です。
しかし、だからといって安心はできません。大腸がんの初期はごく少量の出血しか見られないことが多く、万が一大腸がんだった場合は「少量の出血だから大丈夫」「痔だろう」という自己判断が発見を遅らせる原因になります。血便が見られた場合は、出血量に関わらず原因を確認することが必要です。
編集部
血便が出る原因として、大腸がん以外にはどのような病気や状態が考えられますか?
柏木先生
血便の原因は多岐にわたります。最も頻度が高いのは痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)などの肛門疾患で、次いで大腸ポリープ、大腸憩室出血(だいちょうけいしつしゅっけつ)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、感染性腸炎(食中毒など)が挙げられます。
また、便の色も原因特定の手がかりになります。肛門に近い部位からの出血ほど鮮やかな赤色になりやすい一方、胃や十二指腸など上部消化管からの出血は、胃酸により酸化されるため黒いタール状の便として表れることが多くなります。
編集部
トイレットペーパーに少し血がつく程度でも、受診したほうがよいのでしょうか?
柏木先生
少量であっても、受診をお勧めします。ペーパーに少し血がついた程度なら痔だろうと自己判断して受診しない人は非常に多い印象ですが、痔と大腸がんは見た目の出血量や色だけでは区別できません。特に40歳以上、大腸がんの家族歴がある、血便を2回以上繰り返す、便の太さや回数に変化がある、といったリスク因子に該当する場合は、大腸内視鏡検査を含む精査が強く推奨されます。「たかが少量の出血」と思いがちですが、些細なサインも見逃さないことが大切です。
血便で早急に受診すべき「6つの特徴」と随伴症状
編集部
すぐに受診すべき血便の特徴を教えてください。
柏木先生
以下のいずれかに当てはまる場合は、早急な受診を強くお勧めします。
① 大量出血や血の塊が出る
② 黒いタール状の便が出る
③ 便全体に血が混じっている
④ 腹痛・体重減少・立ちくらみや倦怠感などの貧血症状を伴う
⑤ 血便を繰り返す
⑥ これまでと排便パターンが変わった
特に①と②は深刻な出血を示すサインであり、ただちに受診をお勧めします。自己判断せず、まずは消化器内科にご相談ください。
編集部
血便に伴って表れる症状で注意すべきポイントはありますか?
柏木先生
血便と同時に以下の症状がみられた場合は、特に注意が必要です。
① 意図しない体重減少
② 持続する腹痛や腹部膨満感
③ 排便しても残った感じがする(残便感)
④ 便が以前より細くなった(便の狭小化)
⑤ 慢性的な貧血による倦怠感・息切れ・顔色不良
⑥ 原因不明の発熱が続いている
これらの症状は大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの重篤な疾患でみられることがあります。一つでも血便と重なる場合はすみやかに消化器内科を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。

