経管栄養は、お口から十分に食事がとれない方にチューブを通じて栄養や水分、薬を届ける方法で、在宅介護でも重要な役割を果たします。安全性を重視して続けていくためには、注入前の体調やチューブの位置の確認、適切な姿勢の保持、決められた速度での注入など、基本的な手順を正しく守ることが欠かせません。また、感染予防のための手指衛生や器具の管理も大切です。一方で、嘔吐や下痢、チューブのつまり、自己抜去などのトラブルが起こることもありえます。この記事は、経管栄養の具体的な手順と在宅での管理のポイント、さらにトラブル発生時の対処法をわかりやすく解説します。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
経管栄養とは?必要になる状況と種類

お口から十分に食事がとれない方に、チューブを通して栄養や水分、薬を腸に届ける方法です。病状の進行や嚥下障害などで必要になり、経鼻経管栄養や胃ろうなどいくつかの種類があります。
経管栄養とは
お口から十分に食事や水分をとることが難しくなった方に対し、細いチューブを通して胃や腸に直接栄養を届ける方法です。経管栄養は、栄養バランスの整った専用の栄養剤を用いることで、必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミン・ミネラルを安定して補給できます。また、点滴と比べて腸の機能を保ちやすい利点もあり、在宅介護の場面でも長期的な栄養管理の方法として広く用いられています。
参照:『経管栄養法の手順 』(健康長寿ネット)
経管栄養が必要になる状況
病気やけがなどでお口から十分な量の食事をとることが難しくなったときです。例えば、脳梗塞やパーキンソン病などによる嚥下障害、認知症の進行による食事拒否や摂取量の低下、頭頸部がんの治療後で飲み込みに支障がある場合などが挙げられます。また、意識障害や全身状態の悪化で、経口摂取が一時的または長期的に不可能なときにも選択されます。
経管栄養の種類
経管栄養の種類には、チューブをどこから挿入するかによる方法の違いがあります。代表的なものが、鼻から細いチューブを挿入して胃や腸へ栄養剤を送る経鼻経管栄養です。短期間の利用が想定される場合に選ばれやすい方法です。長期的な栄養管理が必要な場合には、腹部から胃に直接チューブを通す胃ろうや、より先の腸へ管を留置する腸ろうが用いられます。
また、必要なときだけチューブをお口から食道へ入れて注入し、終わったら抜去する間歇的(かんけつてき)口腔食道経管栄養法の選択肢が挙げられます。目的や期間、本人の状態に応じて適切な方法が検討されます。
参照:『経管栄養法の手順 』(健康長寿ネット)
【胃ろう】経管栄養の実施手順

胃ろうによる経管栄養は、手洗いと物品準備を行い、体調と胃ろう周囲を確認してから、半座位を保ち、栄養剤を規定量・規定速度で注入し、注入後にフラッシュと体位保持を行います。
実施前の準備
胃ろうによる経管栄養の安全性を高めて行うためには、実施前の準備がとても大切です。まず、石けんと流水で手をよく洗い、必要に応じて手指消毒を行います。次に、処方された栄養剤・シリンジやボトル、延長チューブ、手袋、ガーゼ、ぬるま湯などの物品をそろえます。そのうえで、体温・脈拍・顔色・呼吸状態などを観察し、発熱や強い呼吸苦、下痢・嘔吐などがないかを確認します。胃ろう周囲の皮膚の赤みや浸出液、痛みの有無、固定板やチューブの位置もチェックし、異常があれば無理に注入を始めず、事前に医師や看護師への相談が大切です。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)
栄養剤注入中の管理
栄養剤を注入している間は、誤嚥や不快症状を防ぐための細かな観察と姿勢の維持が大切です。まず、上半身を30度または90度ほど起こした半座位・座位を保ち、苦しそうな様子がないか、表情や呼吸、咳の有無をこまめに確認します。栄養剤は指示された速度を守って注入し、速く入れすぎないよう注意します。途中で顔色の変化、咳き込み、嘔気・嘔吐感、冷や汗、腹部膨満感などがみられた場合は、いったん注入を中止し、様子を観察します。異常が続くときや強い症状があるときには、自分で判断せず、早めに医師や看護師へ連絡して指示を仰ぐことが重要です。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)
注入終了後の処置
注入が終了したら、まず指示された量のぬるま湯や水でフラッシュを行い、チューブ内に残った栄養剤を押し流して閉塞を予防します。その後、クランプをしっかり閉じてから接続を外し、胃ろうボタンやチューブのキャップをしっかり閉めます。胃ろう周囲の皮膚の汚れや浸出液があれば、清潔なガーゼでやさしく拭き取り、必要に応じてガーゼ交換を行います。注入後すぐに寝かせると逆流や誤嚥のリスクが高まるため、30〜60分ほどは上半身を起こした姿勢を保つことが重要です。さらに、注入した量や時間、体調の変化があれば記録しておきます。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)

