経管栄養中のトラブルと対処法

経管栄養中は、嘔吐・下痢・腹部膨満感、咳き込みや呼吸苦、チューブのつまり・抜去、胃ろう周囲の発赤や滲出液などのトラブルが起こることがあります。これらが見られた場合はいったん注入を中止し、状態を観察したうえで、早めに医師や看護師へ連絡して指示を受けることが大切です。
嘔吐や逆流が起きた場合
まず栄養剤の注入をただちに中止し、頭を横向きにして、お口の中から外に流れ出るようにし、吐物や栄養剤が気道に入りにくい姿勢に整えます。吸引の道具がある場合はお口の中を吸引します。そのうえで、お口のまわりや衣類をやさしく拭き取り、必要に応じて着替えを行い、本人が落ち着けるよう声かけをします。呼吸が苦しそう、顔色が悪い、咳き込みが続くなどの様子がみられる場合は、無理に再開せず、そのまま安静を保ちます。嘔吐量や回数、いつ頃起きたかを確認し、記録しておくと医療者への情報提供に役立ちます。症状が強いときや繰り返すときは、早めに医師や看護師へ連絡し、今後の注入量や速度、実施の可否の指示をあおぐことが大切です。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)
チューブの閉塞が起きた場合
チューブが閉塞して栄養剤や水が流れなくなった場合は、まず注入を中止し、無理に強く押し込まないことが重要です。シリンジを外してチューブの曲がりや折れがないか、接続部が緩んでいないかを確認し、それでも改善しないときは、指示があれば少量のぬるま湯で軽く吸引・押し引きしてみます。
ただし、強い圧をかけるとチューブ損傷や急激な注入につながるため避けます。詰まりが取れない場合や、閉塞を何度も繰り返す場合は、自分で判断して処置を続けず、医師や看護師に連絡して指示をあおぎます。また、今後の予防のため、注入後の十分なフラッシュや薬剤の溶解方法も、あらためて確認しておくと安心です。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)
下痢が続いている場合
まず経管栄養の注入速度や量が適切かを確認し、急に増量していないか、冷たいまま注入していないかを見直すことが大切です。下痢が何度も続くと脱水や電解質異常の原因になるため、尿の回数や量、お口の渇き、発熱の有無などもあわせて観察します。強い腹痛や発熱、血便を伴うときや、水様便が1日に何度も出る場合は、自己判断で栄養剤の中止や変更を行うのではなく、早めに医師へ連絡し、指示を受ける必要があります。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)
チューブが抜けた場合
まず栄養剤の注入をすぐに中止し、無理に自分で挿し直さないことが重要です。胃ろうの場合は、挿入口が早くふさがってしまう可能性があるため、抜けた時間を確認し、ガーゼなどで軽く覆って清潔を保ちながら、早急に医師や看護師へ連絡します。指示があるまで飲食は控え、腹痛や出血、発熱、ぐったりしている様子がないかを観察します。
参照:『在宅における胃ろう管理の手引き』(長崎市訪問看護ステーション連絡協議会)
経管栄養の維持に必要なメンテナンス

経管栄養を安全性を高めて続けるためには、毎回の丁寧な手洗いと器具の清潔保持、注入前後の十分なフラッシュによるチューブの閉塞予防、胃ろう周囲皮膚の観察とスキンケア、固定状態やチューブ長の定期確認、体重や便通・体調の記録と変化時の早期相談が大切です。
チューブ・ボタンの交換
チューブやボタンは、一定の期間ごとに交換が必要となる医療器具です。交換時期や方法は製品の種類や状態によって異なるため、医師の指示や訪問看護師の説明に従います。一般に、バンパー型は4〜6ヶ月ごと、バルーン型は1〜3ヶ月ごとといわれています。多くの場合、交換は医療機関や在宅で医師・看護師が行い、自己判断での交換は避けます。
参照:『Ⅲ 在宅医療の実際 4.在宅経腸栄養法』(大阪大学病院)
皮膚トラブルの予防
胃ろう周囲をいつも清潔で乾いた状態に保つことが大切です。毎日、石けんをよく泡立ててぬるま湯でやさしく洗い、ごしごしこすらずに丁寧に洗浄した後、水分をしっかり拭き取ります。チューブやボタンと皮膚の間にガーゼを使用する場合は、湿ってきたら早めに交換し、同じ場所に長時間圧がかからないよう固定の向きや位置をときどき見直します。赤みやかゆみ、浸出液、痛みが出てきたときは、自己判断で市販薬を塗らず、早めに医師や看護師へ相談し、適切なケアや保護材の使用方法の指示を受けることが重要です。
参照:『胃ろうの日常の手入れ』(NPO法人 PDN)
定期的な医療機関でのチェック
経管栄養を安全性を重視して続けていくためには、定期的に医療機関で状態を確認してもらうことが大切です。診察では、体重や栄養状態、脱水の有無、血液検査の結果などから、現在の栄養量や栄養剤の種類が適切かを評価します。また、胃ろうやチューブの位置・固定状態、皮膚の発赤や浸出液、肉芽の有無などもあわせてチェックされます。必要に応じて、栄養剤の変更や注入速度・回数の調整、チューブやボタンの交換時期の相談ができます。日頃気になっていることや在宅でのトラブルも、定期受診の際にメモを見ながら遠慮なく相談すると安心感があります。

