どんな人がなりやすい? 横紋筋融解症のリスク要因
編集部
横紋筋融解症になりやすい人の特徴や、気をつけるべき生活習慣などはあるのでしょうか?
舛森先生
横紋筋融解症のリスクは3つあります。1つ目は 「脱水」です。夏場に多い脱水や熱中症は腎臓の血流を低下させ、腎臓を悪くする原因になります。実は、横紋筋融解症は薬の副作用だけでなく、地震などで瓦礫の下に挟まれて筋肉が強く圧迫され続けることでも起こります。脱水状態では横紋筋融解症になりやすいため、スタチンを飲んでいる人はさらにリスクが上昇します。しっかり水分補給をすることが予防につながります。
編集部
薬の強さや種類も関係してきますか?
舛森先生
その通りです。リスクの2つ目は「スタチンの中でも強い薬を使っている」です。ストロングスタチンなどと呼ばれ、コレステロールがなかなか下がらないからと強い薬を飲んでいる人はよりリスクが高くなります。実際、最も強い薬を飲んでいる人は、何も飲んでいない人の75倍もリスクが高かったというデータもあります。昔は値が高かったけれど今は改善してきているなら、「弱い薬に変えてもいいのではないか」と主治医に相談を検討することも大事です。
そして3つ目は「スタチン以外の、横紋筋融解症の副作用がある薬を飲んでいる」です。中性脂肪を下げるフィブラート系の薬や、一部の抗菌薬(抗生物質)、精神科の薬、パーキンソン病の薬にもリスクとなるものがあります。
編集部
もし発症してしまったら、病院ではどのような検査や治療を行うのでしょうか?
舛森先生
血液検査でクレアチニンキナーゼという筋肉の酵素を測ります。横紋筋融解症になると、その値が5000~1万超のような非常に高い数値になります。早期に発見できれば、原因となる薬を中止することで数週間かけてゆっくり改善します。しかし発見が遅れると、腎臓が一時的に機能しなくなり命に関わったり、腎機能を補うために将来にわたって透析が必要になってしまうこともあります。
【知っておきたい最新情報】
スタチンが合わない人への新しい治療選択肢
「スタチンを飲むと筋肉が痛くなってしまう」という人に、うれしいニュースです。スタチンとは別の仕組みで働く新しいコレステロールの薬が登場しています。この薬は筋肉への影響が出にくいのが大きな特徴です。
1万2千人以上が参加した大規模な研究では、この薬を飲んだ人は心筋梗塞や脳梗塞などの重い病気の発生リスクが約1割減り、さらにスタチンで心配されていた糖尿病のリスクも増えなかったと報告されています(2023年、米国の研究より)。
2025年の欧州のガイドラインでも、スタチンが合わない人への選択肢として同薬が推奨されました。「副作用が心配で薬をやめたい」と感じている人は、自己判断で中止せず、主治医に「ほかのお薬に変えられませんか?」と相談してみてください。
食事からのアプローチ:コレステロールを下げる7つの食事法
編集部
副作用のリスクを考えると、やはり薬に頼りすぎるのは怖いですね。極力薬を使わずに、食事でコレステロールを下げることはできるのでしょうか?
舛森先生
もちろんです。今回はデータに基づき、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げることが確認されている食事法を厳選して7つご紹介します。
1:フィトステロール(植物ステロール)
舛森先生
植物や果物、穀物に含まれる植物由来の油で、とうもろこし、ごま油、大豆、アボカド、ナッツなどに含まれます。口から摂取した油の吸収を阻害してくれるため、コレステロールが上がりづらくなります。スタチンを飲んでもLDLコレステロールが130を超えている人に1日5.1gフィトステロールを追加したところ、LDLコレステロールが低下したというデータや、ドイツの研究で2型糖尿病患者85名にフィトステロール8%を含む食事を20g摂取してもらった結果、12週間後にLDLコレステロールの上昇が緩和されたという報告があります。イランの研究でも、ごま油を1日大さじ2杯摂取して総コレステロールが低下したという結果が示されました。いつものサラダ油をごま油に変えるだけでも効果が期待できます。
2:水溶性食物繊維
舛森先生
水に溶ける食物繊維で、便を柔らかくしたり、腸内細菌の餌になってお腹の調子を整えたりする働きがあります。摂取量が1g増えるごとにLDLコレステロールが平均2.2低下するというデータもあります。水溶性食物繊維は「ネバネバしたもの、ぬるっとしたもの」に多く、納豆、昆布、わかめ、もずく、長芋などが代表的です。特に納豆は、納豆キナーゼが血液をサラサラにしてくれるとも言われています。乾燥わかめは手軽で保存もしやすく、生と効果も劣らないので、酢の物やお味噌汁に混ぜてみてください。
3:アマニ油
舛森先生
オメガ3脂肪酸、中でもアルファリノレン酸というLDLコレステロールを下げる油が含まれています。一部の研究では1日10g(約大さじ1弱)を夕食時に摂取したところ、1カ月で小型LDLコレステロールが25.8%低下したという報告もされています。アマニ油は酸化しやすいため加熱は避け、サラダに軽く塩やオリーブオイルを振り、その上からかけて食べるのがおすすめです。
4:大豆
舛森先生
大豆に含まれるイソフラボンが総コレステロールやLDLコレステロールを低下させます。牛ひき肉に大豆油を添加したものを食べた研究では、普通の牛ひき肉を食べた人に比べLDLコレステロールが9.3%、総コレステロールが14.9%低下しました。日常的に豆腐や納豆を一品加えるだけでも効果的です。
5:魚
舛森先生
DHAやEPAが多く含まれています。週4回以上摂取すると心筋梗塞のリスクが21%低下し、週100g摂取するごとにリスクが5%ずつ低下するというデータがあります。ただし、魚には微量の水銀が含まれており、多量に食べると吐き気や下痢、めまい、腎臓機能の悪化といった水銀中毒を起こす恐れがあります。金目鯛、メカジキ、クロマグロなどは週80gまでに抑え、水銀が少なくDHAが多いサバ、イワシ、サケ、牡蠣などがおすすめです。昼食などに手軽なサバ缶を取り入れるのが良いでしょう。
6:ナッツ
舛森先生
オメガ3脂肪酸や一価不飽和脂肪酸が多く含まれます。週5回以上ナッツを食べる人は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが14%低かったという5万人規模の研究データがあります。おすすめは「小袋に入ったナッツ」をおやつ代わりにすることです。手が汚れず仕事中でも食べられますし、スナック菓子から置き換えることでトータルのカロリーも減らせます。特にオメガ3脂肪酸が豊富なくるみがおすすめです。
7:地中海食
舛森先生
魚や野菜、果物、大豆製品、乳製品、オリーブオイルを中心とした欧州地中海沿岸の食事法です。肥満状態にある2650人を対象としたメタ分析では、低脂肪食を食べたグループと比べても、地中海食を食べたグループの方が総コレステロール値が平均7.4低かったというデータがあります。血管が詰まるリスクだけでなく、認知症や特定のがんのリスクも低下させる「スーパーフード」的な食事法です。地中海食に使われる食材は納豆や豆腐、青魚など、日本人にも親しみやすいものが多く含まれています。
【知っておきたい最新情報】
2025年に発表された、世界中の研究をまとめた大規模分析で、地中海食が心臓や血管を守る効果が改めて確認されました。1万人以上のデータを統合した結果、地中海食を続けた人は心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが約半分に下がっていたのです。
興味深いのは、コレステロール値自体は薬ほど大きく下がらないのに、血管を守る効果はとても大きかったという点です。地中海食には、コレステロールを下げるだけでなく、体の炎症(血管を傷つける原因のひとつ)を抑える力もあると考えられます。
魚、野菜、果物、大豆製品、オリーブオイルを中心にした食事は、薬に頼る前にまずできることとして、最新の研究でも推奨されている食事法です。今日の食卓にひとつ取り入れることから始めてみませんか?

