「気がついたらスマートフォンをつい長時間眺めてしまっていた」という経験をした人は少なくないでしょう。キングス・カレッジ・ロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所の研究員らは、スマートフォンを長く使用する人ほど、摂食症(旧・摂食障害)の症状や身体への不満、感情的な過食などがみられやすい可能性があることが示されたと報告しました。不安や抑うつ、感情コントロールの難しさが関係している可能性も指摘されている一方で、因果関係については今後さらに検証が必要とされています。この内容について大迫先生に伺いました。

監修医師:
大迫 鑑顕(医師)
千葉大学医学部卒業 。千葉大学医学部附属病院精神神経科、袖ヶ浦さつき台病院心療内科・精神科、総合病院国保旭中央病院神経精神科、国際医療福祉大学医学部精神医学教室、成田病院精神科助教、千葉大学大学院医学研究院精神医学教室特任助教(兼任)、Bellvitge University Hospital(Barcelona, Spain)。主な研究領域は 精神医学(摂食障害、せん妄)。
研究グループが発表した内容とは?
編集部
キングス・カレッジ・ロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。
大迫先生
キングス・カレッジ・ロンドン精神医学・心理学・神経科学研究所の研究員らによる系統的レビューでは、2011年以降に発表された35件の研究を分析しました。その結果、スマートフォンの使用頻度や1日の画面閲覧時間(スクリーンタイム)が長い人ほど、摂食症の症状や身体への不満、感情的な過食などがみられやすいことが確認されました。特に、両者の関連には不安や抑うつ症状の増加、感情のコントロール困難が影響している可能性も示されました。また、食べることをやめられない状態「食物依存症(food addiction)」との関連を指摘する研究もありました。
一方で、多くの研究は一時点の調査であり、因果関係までは明らかになっていません。また研究対象の多くは一般の人々であり、摂食症と正式に診断された人を対象とした研究は限られていました。今後は、長期間にわたって影響を追跡する研究が必要とされています。
研究テーマになった摂食症とは?
編集部
今回の研究テーマに関連する摂食症について教えてください。
大迫先生
摂食症とは、食べ方や食事に関する行動に問題がみられる精神疾患です。従来「摂食障害」と呼ばれてきた精神疾患群で、近年は「障害」という言葉の持つ抵抗感やスティグマへの配慮から、日本摂食障害学会により「摂食症」へと名称変更されました。摂食症では食べる量を極端に減らしたり(拒食)、一度に大量に食べたり(過食)、食べた後に意図的に吐くなどの行動が続き、健康や日常生活、人間関係に大きな影響を及ぼします。代表的なものには、神経性やせ症、神経性過食症、むちゃ食い症などがあります。背景には、体型への強い不安や食への恐怖、ストレスなどが関係しているといわれています。特に若い女性に多いとされていますが、誰にでも起こりうる病気です。つらさを感じたときは早めに医療機関や周囲に相談するようにしましょう。

