視界がぼやける、二重に見える、まぶしさを強く感じる。こうした症状の背景に「円錐角膜」という病気が隠れていることがあるそうです。どういった病態で、どのような治療法があるのでしょうか? そこで、角膜治療の専門家である林孝彦先生(日本大学医学部附属板橋病院眼科/きくな湯田眼科)に、円錐角膜の仕組みや治療法について話を聞きました。
※2025年10月取材

監修医師:
林 孝彦(日本大学医学部附属板橋病院/きくな湯田眼科)
日本大学医学部附属板橋病院眼科診療教授。岡山大学医学部卒業後、横浜市立大学大学院医学研究科(視覚病態学講座)や東京大学角膜組織再生医療講座、東京歯科大学市川総合病院などで学び、横浜南共済病院眼科医長、科長、ドイツ連邦・ケルン大学客員研究員などを歴任。角膜移植において豊富な経験を持ち、その知見を活かして世界各地で精力的に講演活動を行っている。
円錐角膜とは?
編集部
円錐角膜とはどのような病気ですか?
林先生
角膜は本来ドーム状の形を保っていますが、円錐角膜では角膜の芯に該当する実質という部分のコラーゲンが弱くなるため、角膜が薄くなり、前方に突出してしまいます。その結果、角膜がゆがみ、強い乱視が生じて視力が低下してしまいます。これが円錐角膜です。
編集部
発症はいつごろが多いのですか?
林先生
多くは10~20代で発症し、30~40歳ごろまで進行します。30歳で止まる人もいれば、40歳を過ぎても進行する人もいて、個人差が大きいのが特徴です。しかし、早期に適切な治療をおこなえば、進行を遅らせることが可能です。
編集部
円錐角膜になる人は多いのですか?
林先生
最近の調査では200~400人に1人という報告もあります。以前は検査機器も不十分であったのが、診断機器の進歩により軽度の症例が見つかるようになったことも背景にあります。
編集部
症状はどのように進んでいくのですか?
林先生
初期には「見えづらい」「まぶしい」「二重に見える」「目が疲れやすい」などの訴えが多い傾向にあります。進行すると角膜の透明度が下がり、さらに見えにくくなり、角膜に傷や痛みが出ることもあります。見えづらさや痛みが精神的なストレスにつながることもあります。
円錐角膜の原因やリスクについて知りたい
編集部
なぜ円錐角膜になるのでしょうか?
林先生
正確な原因は不明ですが、アトピー性皮膚炎やアレルギー体質、喘息や睡眠時無呼吸症候群のある人はリスクが高いといわれています。家族に円錐角膜の人がいる場合も注意が必要です。また、目を強くこする癖がある人も発症しやすい傾向があります。さらに、レーシックを受けた人は「医原性角膜拡張症:ケラトエクタジア(※)」と呼ばれる似た状態が起こることがあります。※レーシック等の手術によって角膜が薄くなり、円錐角膜のように突出してしまう合併症のこと
編集部
円錐角膜を放置するとどうなってしまうのですか?
林先生
多くの場合は視力低下が徐々に進みますが、重症化すると角膜のむくみや濁りによって失明に近い状態にいたるケースもあります(WHOの定義では「よいほうの目の視力が0.05未満」になった場合を失明としています)。早期に診断・治療を始めることが非常に重要です。
編集部
円錐角膜の治療にはどんな方法がありますか?
林先生
病気の進行を止める治療と、視力を回復させる治療の2本柱で進めます。具体的な治療内容は、進行度や症状によって異なります。軽度であれば眼鏡やソフトコンタクトレンズで矯正できますが、中程度以上ではハードコンタクトレンズが必要です。進行が確認されれば「角膜クロスリンキング」で進行を遅らせ、さらに視力矯正が難しい場合には、角膜内リング(※)や角膜実質移植(ケアーズ:CAIRSと呼ばれることもある)、表層/全層角膜移植といった外科的治療を検討します。※角膜内に半弧状のリングを挿入し、角膜のカーブを平坦にする治療法

