型に入れて、混ぜて、焼くだけ——「これでいいじゃん」の誕生
収録当日、はるあんさんが持ってきたのは塩バターパンのレシピだった。工程は驚くほどシンプルで、型に材料をぶち込んで混ぜて焼くだけ。ロール成形も、打ち粉も必要ない。
「塩バターパンが今また世の中で流行ってるなっていうのをInstagramとか見てて感じて。私もずっと前から好きで塩バターパンを作ってたんですけど、ロールパンみたいな成形が難しかったり手間に感じて。でもあの味を食べたいだけなのにっていう時はこれでいいじゃんって思って」
食べたい味があっても手間がかかる。そのギャップを埋めるのがはるあんさんのレシピの出発点だ。動画タイトルもそのまま「これでいいじゃん塩バターパン」にした。焼き上がったパンを熱々のうちに切ると、バターがジュワッとにじみ出てくる。「背徳感しかない」と笑いながら、それでも手が止まらなかった。
「これでいいじゃん」という発想は、今年1月に出版した最新刊「はるあんの冷蔵庫空っぽおかず」にも貫かれている。冷蔵庫を空っぽにすることは食品ロスを減らすだけでなく、買い物の回数が減り、気持ちも楽になる。
「何か冷蔵庫の中から甘くおいしいものができた時、ちょっと料理上手な気分になりますよね。そういう小さな幸せを積み重ねていけたらなっていう思いで100品頑張ろうって」
スペインのパエリアが、ちくわになった理由
最新刊「冷蔵庫からっぽおかず」の表紙に選んだのは「ちくわのパエリア」だ。去年3月、スペインで本場のパエリアを食べ歩いた。あちこちの食堂を回るうちに、ある発見があった。
「おいしいなと思ったパエリアが結構お菓子っぽいというか。魚介の旨味が入ってる丁寧なパエリアももちろんおいしいんですけど、それだと日本の炊き込みご飯の方がおいしいなってふと気づいちゃって。だとすると、本当にお菓子というか、誰でも簡単に作れて、誰でも手軽に食べれる。金額的にもそんなにはらない、ちょっと手軽なパエリアのおいしさに気づいて」
その気づきから生まれたのがちくわを使ったパエリアだった。ちくわには海鮮の旨味が凝縮されていて、穴が開いていてどこか可愛い。スペインの食堂で感じた「これでいいじゃん」が、日本のキッチンに着地した。
旅先での発見はスペインだけではない。去年1年でブラジル、ペルー、韓国、タイ、シンガポールと7カ国を回った。なかでもペルーの料理が印象に残っているという。
「お出汁がすごくおいしいと思うんですよね。コテコテしてないんです。だからちゃんとお出汁を使う感じとか、旨味をすごく重視してる感じがしました。日本と意外と変わらないといいますか、あっさりめが多い」
食べ歩けば食べ歩くほど、「これでいいじゃん」の引き出しが増えていく。

