ふとしたときに感じるめまいやふらつきは、頸動脈狭窄症と関係している場合があります。この記事では、脳血管に関連するめまいの特徴や、一過性脳虚血発作(TIA)との関係について解説します。めまいの種類による違いや、速やかに医療機関を受診するべきタイミング、受診前に準備しておくと役立つ情報についても詳しく紹介します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
一時的なめまいと頸動脈狭窄症:症状の関係を理解する
「最近、ふらっとするときがある」と感じている方の中には、頸動脈狭窄症が背景にあるケースも考えられます。めまいはさまざまな原因で起こりますが、頸動脈狭窄症に関連するめまいには特徴的なパターンがあります。
頸動脈狭窄症が引き起こすめまいの特徴
頸動脈狭窄症などの脳血管の問題によるめまいは、単独で起こることは少なく、手足のしびれや言葉の出にくさといった他の神経症状を伴うことが多いのが特徴です。特に「一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)」と呼ばれる状態では、数分から数十分程度の短い時間に、めまい・ふらつき・視野のぼやけ・言葉の出にくさ・片側の手足のしびれなどの症状が現れ、その後ほぼ回復するという経過をたどります。
このTIAは、脳梗塞の前触れとして非常に重要なサインとされています。症状が短時間で消えるからといって「たまたまだろう」と放置するのは危険であり、速やかに医療機関を受診することが求められます。TIAを経験した後、短期間のうちに脳梗塞が起こるリスクが高まることが報告されているため、早期の対応が脳へのダメージを防ぐうえで欠かせません。
めまいを見極めるためのポイント
めまいには大きく分けて「回転性(ぐるぐる回る感覚)」と「浮動性(ふわふわ・ふらつく感覚)」の2種類があります。頸動脈狭窄症や脳の血流低下に関連するめまいは、どちらかといえば浮動性のものが多く、立ち上がったときや歩行中にふらつきを感じるという形で現れることがあります。
一方で、回転性のめまいは内耳の異常(良性発作性頭位めまい症など)でも起こりやすく、必ずしも血管の問題ではありません。ただし、めまいに加えて言葉のもつれ・片側の脱力感・視野の変化などが伴う場合は、脳血管に関連した問題を疑う必要があります。「めまいだけだから大丈夫」と自己判断せず、気になる症状が続く場合は神経内科や脳神経外科への相談を検討しましょう。
一時的なめまいを放置するリスク:早期受診が重要な理由
一時的なめまいは、それ自体が短時間で治まるために「様子を見ればよい」と思われがちです。しかし、その背景に頸動脈狭窄症が潜んでいる場合、放置することで取り返しのつかない事態につながることがあります。
TIAから脳梗塞へと移行するリスク
TIA(一過性脳虚血発作)は、症状が消えてしまうことから「軽い発作」と見なされることがありますが、医学的には脳梗塞の強力な予測因子として位置づけられています。TIAが起きた後、特に48時間以内は本格的な脳梗塞に移行するリスクが非常に高い時期とされています。そのため、症状が数分で消えたとしても『治ったから大丈夫』と自己判断せず、すぐに医療機関を受診することが、脳梗塞を防ぐ最大のチャンスとなります。
頸動脈狭窄症が原因でTIAが起きている場合、血管の狭窄やプラークの状態が改善されない限り、同様の発作が繰り返されることがあります。そのたびに脳細胞がダメージを受けるリスクが積み重なっていくため、「症状が消えたから問題ない」という判断は避けるべきです。
症状がなくても進行する動脈硬化の怖さ
頸動脈狭窄症のもうひとつの難しさは、狭窄が相当程度進んでいても自覚症状がまったく現れないケースがあることです。血管の内腔(ないくう)が50%程度狭くなっても無症状のことがあり、初めての症状が脳梗塞の発症という形で現れることも少なくありません。
このような「症状のない頸動脈狭窄症(無症候性頸動脈狭窄症)」は、健康診断や他の疾患の検査中に偶然発見されることが多いです。だからこそ、生活習慣病を持つ方や年齢的にリスクの高い方は、自覚症状がなくても定期的に血管の状態を確認することが、脳梗塞の予防において意味を持ちます。

