本編のあらすじは、およそ次のようなものだ。ネタバレは勘弁、という方はここで引き返していただきたい。ママが必死に育てているのは、特殊能力を持つスーパーベイビー。ちょっとしたトラブルの後、ベイビーは「空の上からママを選んで生まれてきたんだ」とテレパシーでママに語りかける。理由は「世界一素晴らしいママだから!」「誰よりも頑張っているのを、僕は知っているよ!」。そしてふたりで感動の涙を流して、おわり。
――ネタバレもなにも、ストーリー的なものは特になかった。
根拠のない言説の羅列
問題の「あとがき」は、要約すると以下のような主張が堂々と語られていた。~要約~
赤ちゃんは「Mr.ベイビーマン」のように強い存在だが、生後半年までに打つワクチンが弱点になる。子どもたちに胎内記憶(※これについては後述)を聞いているとき、少子化の理由を尋ねると、生まれてこない理由は「注射が嫌だから」との答えだった。
不妊で困ったママが月に向かって「注射はしないからどうか私のお腹に入ってください」と言うと、実際生まれた子が30人以上いる。
昨今、0歳の子が打つワクチンの量が増え、それと同時に発達障害や自閉症も増えた。コミュニケーションがうまくできないから不登校にもなる。ところが、調べてみるとはしかにかかる子はほとんどいない(いてもごく少数)。そもそもワクチンには効果がなく、逆に免疫が下がってしまう。
~要約終わり~
より悪い方向へ爆走中!?
子どもの語り(胎内記憶)を利用して、反ワクチンの主張を絵本で展開するという倫理観のバグに、まずはのけぞる。謎の「スーパーベイビー設定」は、「いま、この世の中がワクチンでおかしなことになっているから、それを救う使命がある!」という意図があるように思えてならない。赤ちゃんへの定期接種に忌避感がある人、胎内記憶界隈、そしてのぶみ氏の熱狂的なファン――。それ以外の一般的な層が何かのきっかけでこの本を読んだとして、「なるほど、じゃあワクチンを打たせるのをやめておこう」となるだろうか。いや、そうはならんだろ。
思えばこの著者は、「暴走族の総長で33回の逮捕歴がある」という虚偽の経歴にはじまり、「親が死んだら困るだろう?」と子どもを恐怖で脅す作品『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)や、母親の自己犠牲を過剰に美化した歌詞『あたしおかあさんだから』など、これまでも強烈なインパクトを残してきた。
しかしここへ来てますます、健康被害や命のリスクに直結しかねない方向へと、爆走しているように見える。
実際、同書のAmazonの低評価レビューに目を向けると、並んでいるのは子どもの健康や命を心配する切実な声ばかりだ。ただ、このワクチンに関する医療デマの危険性については、おそらくすでに他の多くのメディアが検証記事を出していると思われる。
そこでここでは、医療デマ以外の視点――この本が孕む「もう一つの根深い問題」について触れておきたい。

