便潜血検査で「異常なし」と言われると、ひとまず安心してしまう人は多いものです。しかし実際には、陰性でも病気が隠れているケースがあります。そこで、検査の特性や見逃されやすいリスク、注意すべき症状について、川崎駅前大腸と胃の消化器内視鏡・肛門外科クリニック院長の近藤先生に詳しく聞きました。
※2026年4月取材。

監修医師:
近藤 崇之(川崎駅前大腸と胃の消化器内視鏡・肛門外科クリニック)
慶應義塾大学医学部 卒業。東京都済生会中央病院、伊勢原協同病院、総合太田病院(現・太田記念病院)、慶應義塾大学病院、独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター、川崎市立川崎病院 外科医長、東葛辻仲病院などを経て現職。日本外科学会 外科専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医、日本大腸肛門病学会 大腸肛門病専門医、日本消化器外科学会 消化器外科専門医・指導医。
便潜血検査で陰性でも安心できない理由とは?
編集部
便潜血検査が陰性でも安心できないのは、なぜでしょうか?
近藤先生
便潜血検査は便の中に血液が混じっているかを調べる検査であり、必ずしも全ての病変を検出できるわけではないためです。出血がない段階の病変や、出血があっても検査時に便に混ざらなかった場合は陰性となることがあります。場合によっては進行性の大腸がんでも陰性と判断されることがあるのです。そのため、陰性だからといって、大腸の病気が完全に否定されるわけではない点に注意が必要です。
編集部
検査の仕組み上、見逃しが起こることもあるということですか?
近藤先生
はい。便潜血検査は出血を捉える検査であり、病変そのものを直接確認するものではありません。また、採取した便の状態やタイミングによっても結果が左右されるため、一定の見逃しが生じる可能性があります。
編集部
それではなぜ、便潜血検査を行うのでしょうか?
近藤先生
便潜血検査は、早期の大腸がんや大腸ポリープのスクリーニングとして非常に有用な検査だからです。さまざまな研究により、便潜血検査を毎年受診すると大腸がんによる死亡率が低くなることが報告されています。ただし、便潜血検査はあくまでもふるい分けの検査であるため、結果を過信せず、必要に応じて内視鏡検査など精密検査につなげることが重要です。
編集部
「検査は必要だけど、陰性であっても安心できない」ということですね。
近藤先生
陰性であっても「今回の検査では異常が見つからなかった」と理解しておくことが大切です。通常、毎年継続して検査を受けると進行がんが見つかる可能性が高まるとされています。そのため、1回陰性だったからといって受けるのをやめてしまうのではなく、連続して受ける必要があります。特に、何らかの症状がある場合や不安がある場合は、結果にかかわらず医療機関で相談することをおすすめします。
編集部
検査の頻度は、どのくらいが適切でしょうか?
近藤先生
一般的には毎年1回、2日連続して採取する便潜血検査が推奨されています。継続して受けることで、見逃しのリスクを減らすことができます。また陰性であっても、次回の検査も継続して受けることが早期発見につながります。
見逃されやすいリスクとは?
編集部
便潜血検査で見逃されやすい病気の種類を教えてください。
近藤先生
代表的なのは、出血が少ない早期の大腸がんやポリープです。これらは常に出血しているわけではないため、検査時に血液が検出されないことがあります。
編集部
出血が少ない病気は見逃される傾向にあるのですね。
近藤先生
はい。出血量が少ないケースに加え、出血が一定でない病気は見逃されることがあります。例えば、潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜に炎症や深い傷ができる病気)やクローン病(主に消化管に炎症が起きる病気)などの慢性炎症性腸疾患は、症状が軽い時期や安定期には出血が少なく検出されにくいとされています。また、血管拡張症(胃や腸の血管が広がって出血しやすくなる状態)や腸憩室出血(ちょうけいしつしゅっけつ/腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出た部分から出血する病気)のように間欠的(一定の期間をおいて出たり止まったりすること)に出血する病気も、タイミングによって陰性になることがあります。さらに痔(じ)などの肛門疾患も、毎回出血するとは限らないため注意が必要です。加えて、大腸以外の消化管の病気も、便潜血検査では十分に評価できない場合があります。
編集部
若い人でも注意が必要でしょうか?
近藤先生
近年、若年層でも大腸がんが増加傾向にあるといわれています。若いから大丈夫と考えず、便潜血検査の結果が陰性であったとしても、何らかの症状があれば医療機関を受診することをおすすめします。特に家族歴がある人は、大腸がんのリスクが高いとされているので注意しましょう。

