沖縄・名護市辺野古沖で船が転覆し、同志社国際高校の17歳の女子生徒と船長が亡くなった事故で、国土交通省は5月22日、亡くなった船長を海上運送法違反の容疑で刑事告発したと報じられました。
依頼に応じて人を船で運送する場合には、海上運送法により、事業の登録が必要とされることがあります。報道によれば、事故を起こした船は、この登録がされていなかった可能性があります。
船の船長は亡くなっていますが、亡くなった人を刑事告発した場合、今後どうなるのでしょうか。簡単に解説します。
●亡くなった人は刑事裁判で有罪にできない
被疑者が死亡している場合、起訴してもそもそも法廷に立つべき人がおらず、刑事裁判を進めることが出来ません。
告訴・告発された事件については、警察・検察が必要な捜査を遂げ、最終的に起訴・不起訴の判断を行うことになりますが、被疑者が死亡している場合には、「被疑者死亡」を理由として不起訴処分がされることになります。
なお、起訴時には被疑者が生きていたが、裁判の途中で亡くなった場合には、裁判所が公訴を棄却しなければならないと定められています(刑事訴訟法339条1項4号)。
●それでも告発する理由
今回、告発がなされた理由は、形式的には法の規定に従ったから、と考えられます。
刑事訴訟法239条2項は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」と定めています。
国や地方の公務員には、職務上犯罪を認識したら告発する義務があるわけです。今回の国交省も、海運監督という職務の中で無登録運航という違法行為を把握したため、告発した、ということになります。
また、起訴はできなくても、犯罪行為が行われたと考えられるようなケースでは、事情をよく調べて今後の再発防止などに役立てる意味もあります。

