体調不良が続き、社長の勧めで会社の近くの病院を受診――。働き盛りだった新嶋さんに告げられたのは、「進行胃がん」でした。進行胃がんとは、がん細胞が胃壁の粘膜や粘膜下層を越えて、「固有筋層」と呼ばれる深い部分にまで達したがんのことです。さらに進行すると、ほかの臓器や腹膜へ転移します。胃全摘術をし、抗がん剤治療を続けている新嶋さんに、現在に至るまでの経緯と進行胃がんについて詳しく聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年11月取材。
体験者プロフィール:
新嶋梨佳さん
1983年生まれ、群馬県在中。夫と娘の3人家族。転職2カ月後の2024年11月に体調不良が続いたため、病院を受診。2025年3月に消化器内科にて胃がんが発覚。その後大きな病院へ転院し、検査の結果「進行胃がん」と診断される。現在は抗がん剤治療を受けながら、自宅での運動、娘の趣味のコスプレに使用する小物作りなどをしながら過ごしている。
背中の不調を感じたら胃の病気も疑ってほしい
編集部
転職前は多忙な日を過ごしていたと聞きました。
新嶋梨佳さん
2024年9月までは化粧品関連会社の常務を務めており、国内外を飛び回るような生活でした。残業や会食も多く、家族や取引先からも体調を心配されるような働き方をしていましたね。
編集部
いつごろから体に異変を感じ始めたのでしょうか?
新嶋梨佳さん
2022年だと思います。年に4回も高熱が出て、下がった後は背中の奥の痛みや嘔吐(おうと)があったんです。ただ、かかりつけの内科に数回受診しても原因は不明のままでした。翌年は特に強い症状はなかったため、そのまま放置していました。
編集部
再受診することになったきっかけを教えてください。
新嶋梨佳さん
転職2カ月後の2024年11月に、背中と左肋骨(ろっこつ)の奥の強烈な痛みや胃液のみの嘔吐が続き、会社の社長から病院に行くよう勧められたことがきっかけですね。すぐに会社近くの内科、胃腸内科、消化器内科を受診しました。
編集部
その後、受診先の病院で「進行胃がん」と診断されるわけですね。
新嶋梨佳さん
はい。消化器内科で胃カメラ検査を受け、医師から「胃がんの可能性があります」と言われました。その後の精密検査で「胃がんの可能性が高い」と言われた時は何も考えられず、ただただ涙を流すばかりで……。2025年3月に胃がんが発覚し、4月に紹介先の病院で血液・CT・X線(レントゲン)・胃カメラ検査を実施。その結果、胃の壁面の異常な厚さや胃内部全体のひだの状態から、進行胃がんのステージ2と診断されました。医師からは「胃の壁面の厚さと内部全体のひだの炎症具合から、胃の全摘出が必要だ」という説明があり、「状態から見て発症は数年前」とも言われました。
抗がん剤治療の副作用と術後の苦労
編集部
診断後、どのような治療の経過をたどったのでしょうか?
新嶋梨佳さん
最初の手術は胃全摘術の予定でしたが、開腹時に腹膜播種(ふくまくはしゅ/臓器とおなかの壁の内側を覆っている薄い膜への転移)が発覚したため、手術を途中で断念し、ステージ4と診断されました。抗がん剤治療をした後、再手術のため検査をすると、腹水にがん細胞が含まれる、いわゆる腹水への転移の可能性もあると診断されました。幸い、その後抗がん剤治療の効果が見られたため、体への負担軽減が期待できる手術支援ロボットを用いた内視鏡下手術で胃を全摘出したんです。播種部分の再発・転移予防のため、術後から現在まで2回の抗がん剤治療を実施しています。
編集部
抗がん剤治療の副作用や、食事面での苦労について教えてください。
新嶋梨佳さん
私の使用していた抗がん剤の副作用は、貧血、肝機能障害、末梢神経障害により冷たいものが触れられない、食欲減退、倦怠(けんたい)感、爪剥離、湿疹などが主でした。ネイルを約20年していたため、爪剥離がとにかくつらかったですね。抗がん剤の副作用といえば、“脱毛”というイメージがありますが、私のように脱毛しない抗がん剤もあるみたいです。
発症後は匂いに敏感になったことで、日々食べられるものが異なり苦労しました。特に揚げ物、牛肉、豚肉の匂いが一番きつくて、スイカやメロン、シャインマスカットなどのフルーツをよく食べていました。また、冷やし中華や中華ナムルなど、少し酸っぱいものも食べました。ヨーグルトしか受け付けない日があっても「今日はこれの日なんだ。食べられてよかった。明日は何を食べたくなるのかな?」と前向きに考えることで、何とか乗り越えられた気がします。
編集部
日々の生活を送る上で、工夫していることはありますか?
新嶋梨佳さん
現在は、胃を全摘出したことによるダンピング症状(食事後、未消化のまま小腸に流れ込んだ食物が原因で生じる、動悸・発汗・めまい・腹痛などの不快症状)もあり、1回の食事量を減らしています。限界量は食パン4分の1枚程度のため、1日に8~10食に分けて食べ、症状を緩和させています。また、胃がないことで飲み物や食べ物を体に入れた際に入る空気の排出がうまくできず、苦しくなることが多々あります。そうした中でも、自宅にて運動や娘の趣味のコスプレに使用する小物作りなど、楽しみを見つけながら過ごしています。今の目標は、体調を回復させて仕事に復帰し、家族で海外のディズニーランドに行くことです!

