子どものおねしょ(夜尿症)に悩む保護者は多いものです。特に気になるのが「親の体質が遺伝しているのでは?」といううわさ。果たして真相はどうなのでしょうか。本記事では、その疑問の答えとともに、夜尿症の原因や具体的な治療法について、おおやまこどもクリニック院長の大山先生に詳しく聞きました。
※2025年4月取材。

監修医師:
大山 伸雄(おおやまこどもクリニック)
2007年昭和大学(現・昭和医科大学)小児科医局に入局、2009年千葉県こども病院新生児科、2010年昭和大学(現・昭和医科大学)横浜市北部病院こどもセンター、2016年に英国Evelina London Children's Hospital(エヴェリーナ・ロンドン小児病院)へ2年間の留学を経て、2018年昭和大学(現・昭和医科大学)病院小児循環器・成人先天性心疾患センター 講師に着任。資格および所属学会は、日本専門医機構 小児科専門医、日本小児MR研究会理事、日本小児循環器学会、日本周産期・新生児医学会、日本先天性心疾患インターベンション学会、日本循環器学会、日本成人先天性心疾患学会、Society for Cardiovascular Magnetic Resonance (SCMR)。
夜尿症とは?
編集部
夜尿症とはなんですか?
大山先生
夜尿症とは、5歳を過ぎても、1カ月に1回以上の夜間睡眠中の尿失禁が、少なくとも3カ月以上続く状態と定義されています。本来、赤ちゃんは排尿リズムが未熟であり、2歳くらいまでは毎晩おねしょをしています。しかし、夜間のおねしょは年齢とともに減っていきます。5歳を過ぎても継続する場合には、夜尿症と診断されます。
編集部
夜尿症は病気なのですね。
大山先生
夜尿を心配して小児科を受診するのは、多くの場合小学校に入学した後です。夜尿症は5~6歳で約15%に見られ、その後年齢とともに減少していき、小学校低学年になると約10%、小学校高学年では約5%となります。また、女の子に比べて男の子に多く見られることも分かっています。
編集部
ほとんどの夜尿症が治るのですね。
大山先生
はい、12歳を過ぎると多くの場合は改善しますが、成人になってもおねしょが続く場合があります。特に毎晩夜尿が見られるなど、重症の子どもは治りにくいとされているため、小児科や泌尿器科を受診して相談するとよいでしょう。
編集部
夜尿症を放置すると問題があるのですか?
大山先生
子どもの精神的な発育のためにも、積極的に治療したほうがよいと考えています。夜尿症によって自信をなくし、学校生活や心理面で影響を与える場合があるためです。夜尿症を改善することで、自尊心が回復する可能性があります。
夜尿症の原因とは? 遺伝も関係している?
編集部
夜尿症の原因とはなんですか?
大山先生
大きく分けて、寝ている間に膀胱の許容量を超える尿が作られてしまう「尿量過多」と、「膀胱容量の低下」の2つが挙げられます。寝ている間にたくさんの尿が作られる原因としては、「抗利尿ホルモン」の分泌不足が考えられます。抗利尿ホルモンは夜間睡眠中に多く分泌され、尿量を少なくする働きがあります。
編集部
膀胱容量の低下はなぜ起きるのですか?
大山先生
尿を膀胱にためておく機能が未成熟であるためと考えられます。そのほか、便秘で膀胱が圧迫されて膀胱容量が低下しているケースもあります。
編集部
こうした要因によって夜尿が起こるのですね。
大山先生
夜間の尿量が多くても、目覚めてトイレで排尿すれば夜尿にはなりませんし、膀胱容量が尿量を上回れば夜尿になることはありません。また、膀胱容量が小さくても尿量が膀胱容量を下回れば夜尿になることはありません。この考えに基づき、子どもの夜尿は「夜間尿量の多い多尿型」「膀胱容量の少ない膀胱型」「両者が見られる混合型」の3つに分類されます。
編集部
遺伝が関係していると聞いたことがありますが、本当でしょうか?
大山先生
はい、夜尿症には遺伝が関連していると考えられています。両親のどちらかに夜尿症の既往がある場合、5〜7倍夜尿症を発症しやすく、両親ともに夜尿の既往がある場合は、約11倍夜尿になりやすいことが知られています。遺伝子解析からも、夜尿に関連する遺伝子が存在すると考えられています。

