家に着いて、荷物を置いた。
少しだけ間を置いてから、私は悠真に声をかけた。
「ねえ、悠真」
「なに〜?」
振り向いた顔は、いつもと同じ。
だからこそ、余計に言葉を選ぶ。
「今日……児童館で、お友だちに強い言い方しちゃったの?」
できるだけ穏やかに、問いかける。
すると悠真は、少しも迷うことなく答えた。
「うん、言った」
あまりにもあっさりした返事に、言葉を失う。
「……そっか。どんなこと言ったの?」
「えーとね、『それ違うし』とか、『ちゃんとやってよ』とか」
悪びれる様子もなく、思い出しながら話している。
その様子に、胸の奥がざわつく。
「それで……どうして、そういう言い方になっちゃったの?」
そう聞くと、悠真は少しだけ首を傾げてから
「だって、翔くんもやってたし」
そう答えた。
「……え?」
思わず、聞き返してしまう。
「翔くんもさ、同じこと言ってたよ? だから言った」
当たり前のことのように、悠馬はそう答える。
その言葉に、息が詰まる。
息子の返答に胸が締め付けられる
あっさりと強い言葉を友だちに言ってしまったことを認めた息子。ですがそれは、罪悪感を抱いてないからこその返答でした。
翔くんとは、以前トラブルになったことも。今度は、その翔くんから悪影響を受けているようです。ところが、翔くんと仲のいい期間は長くは続きませんでした。悠真は次第に「学校に行きたくない」と訴えるように。話を聞くと、翔くんが原因のようです…。
息子の”行き渋り”の違和感
物を取られたり、嫌なことを言われたり。
時には、仲間外れのようなこともされているらしい。
「もっと早く言ってくれればよかったのに……」
そう言いながらも、どこかで気づけなかった自分を責めていた。
すぐに担任の長谷川先生へ相談した。
事情を話すと、先生は真剣に耳を傾けてくれた。
「学校でも様子を見てみますね」
そう言ってくれたものの、不安が消えるわけではない。
その後も、悠真からはぽつぽつと訴えが続いた。
「今日も言われた」
「一緒に遊んでくれなかった」
そのたびに胸が痛んだ。
児童館でも同じようなことがあったと聞き、私は何度も悩んだ。
どうすれば、この子を守れるのか。どうすれば、安心して過ごせるようになるのか。
答えの見えないまま、時間だけが過ぎていった。
そんなある日。
「ママ、今日ね!」
学校から帰ってきた悠真が、珍しく明るい声を上げた。
「翔くんと仲良くなった!」
「……え?」
思わず聞き返す。
あれだけ嫌がっていた相手の名前が、こんなにも嬉しそうに出てくるなんて。
「一緒に遊んだんだよ。もう大丈夫!」
満面の笑みでそう言う悠真を見て、私は戸惑いながらも安堵した。
「そっか……よかったね」
本当に、それでいいのかという迷いはあった。
でも、本人が笑っているのなら、そう思った。
わが子が、他の子へイヤな思いをさせるのも、させられるのも、どちらも親にとってツラいできごとです。翔くんとは、仲が悪くなったかと思えば、突然仲良くなったり。違和感を覚えます。
ですが真帆は、この違和感に目をつぶってしまったのです。息子・悠真の言動はエスカレートするばかり。何度言葉遣いを注意しても、直りません。真帆が強く叱っても効き目がなかったのです。
試行錯誤を繰り返していたある日、息子が何か言いたそうな表情をしていることに気づきます。話を聞いてみると…。

