フランスの年金制度
まずは、フランスの年金制度の概要について解説していきます。
その歴史と多様性から複雑と言われるフランスの年金制度について、主な特徴など制度の概要を簡単にまとめます。
年金制度の特徴
フランスの年金制度は、納付した保険料と働いた年数に基づいています。
年金の受給開始年齢は生まれた年によって変動しますが、大まかには62歳を基準としています。
ただし、最近は受給開始年齢引き上げの動きがあります。
2023年に、受給開始年齢を段階的に62歳から64歳に引き上げる年金改革法が導入されましたが、政治的情勢の変化や社会的な議論を経て、2026年の社会保障予算法により引き上げは一時的に停止しています。
停止期間は2028年1月までとされていますが、その後の運用は未定であり、今後の法改正の動向を注視する必要があります。
フランスの年金制度の最大の特徴は、社会保険方式の所得比例型の年金制度が職種ごとに分立している点にあります。
職業別に、収入に比例して社会保険料として納めなければならない税率が決まっており、さらに職業別補完年金と呼ばれる制度が存在します。
三層構造
フランスの年金は、基本年金(第一層)、職業別補完年金(第二層)、そして個人が任意で加入する追加の年金制度(第三層)の3つの層から成り立っています。
1. 基本年金(第一層)
全ての労働者(民間商工業被用者)がこの制度に加入します。
年金の額は以下の3つの要素が計算のベースになります。
・平均年間所得(RAM):
平均年間所得は、社会保険料の算定対象となった所得額から算出されるもので、RAMは最も収入の良い25年間を基に計算されます。
・支払率:
受給資格を満たした際に受け取れる年金の割合を示す基準です。
満額の条件を満たした場合の支払率は、平均給与の50%で、個人の年齢と保険加入期間全体を考慮に入れ、加算された四半期数と最大率を受け取るために必要な四半期数の差によって決定される割合で、50%から減少します。
個人にとって最も有利な計算がされ、最小の支払率は37.5%です。
・保険期間の長さ:
保険加入期間の長さに応じて、支払率が決定されます。
2. 職業別補完年金(第二層)
労働者の職種や業種に応じて、補完的な年金が提供されます。
この制度は、特定の職業集団や業種団体が管理しています。
3. 追加の年金制度(第三層)
任意の加入制度で、個人の補完的な退職準備として設けられています。
受給額
フランスの年金制度は43年間の加入期間が必要で、その場合25年分の平均的収入の50%が年金として支給されます。
過去の拠出期間において最も賃金の高い25年間分の平均収入を、年金支給額の計算根拠としているのが特徴です。
最近の動向
フランスの年金制度は人口の高齢化や経済の変動などの影響を受けており、先述の通り、最近では受給開始年齢の引き上げなどの改革が試みられています。
元々は国の社会的な安定や国民の生活保障を目的として設立されていますが、年金制度の持続可能性や適切な資金供給の問題が、現在も議論の的となっています。
フランスと日本の年金制度を比較
フランスと日本の年金制度には、以下のような違いがあります。
加入期間と受給額
・フランス:
フランスの年金制度では、満額の年金を受け取るためには約43年の加入が必要です。
年金の計算は、最も高い25年間の賃金の50%として行われます。
・日本:
日本の国民年金制度では、満額の基礎年金(自分が納めた保険料の額に応じて将来もらえる一生涯の年金のうち、土台となる部分)を受け取るためには40年の加入が必要です。
しかし、日本の年金は複雑な制度を持っており、基礎年金以外に厚生年金なども存在し、受給額はそれぞれの制度と加入期間に応じて変わります。
なお、かつて存在していた公務員などの「共済年金」は、2015年10月の被用者年金一元化によって厚生年金に統合されました。
現在の日本の年金制度は、公務員も民間企業のサラリーマンも関係なく、すべて「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2階建てというシンプルな枠組みで統一されています。
受給開始年齢
・フランス:
一般的に62歳からが基準ですが、特定の職種や条件によってはそれよりも早く受給開始することも可能です。
また今後は、前述した「受給開始年齢の64歳への引き上げ改革は2026年に一時停止され、2028年1月まで62歳の基準で維持される」ことも、念頭に置いておく必要があります。
・日本:
受給開始の基準年齢は65歳です。ただし、特定の年齢層や条件に応じて、早期(繰り上げ)または遅延(繰り下げ)受給が選択可能です。
年金財源の資金源
・フランス:
フランスの年金は主に雇用者(従業員)と雇用主(会社)からの拠出によって賄われます。
雇用主の拠出額の方が大きいことが特徴です。
・日本:
日本の年金制度も雇用者と雇用主の拠出によるものですが、雇用主と雇用者は、同額の拠出(労使折半)を行います。
また、非雇用者(自営業や無職の人など)は国民年金に加入する義務があります。
制度について
・フランス:
フランスの年金制度は、多様な職業別の特別制度などが存在するため複雑です。
・日本:
日本は、国民年金と厚生年金が存在します。過去には、公務員や私立学校教職員が加入することができた共済年金もありましたが、2015年に厚生年金に一元化されました。
以上の違いを考慮すると、どちらの国の年金制度も違った特徴があり、国の社会保障政策や経済状況などに応じて適時変更されています。

