日常的に使っている薬の中には、腎臓に負担をかける可能性があるものもあります。体調を整えるための薬が、知らないうちに腎機能に影響を与えているケースも少なくありません。今回は、薬と腎臓の関係や注意点について、加藤医院院長の加藤先生に解説してもらいました。
※2026年4月取材。

監修医師:
加藤 徳介(加藤医院)
2000年に昭和大学(現・昭和医科大学)医学部を卒業後、昭和大学病院(現・昭和医科大学病院)にて腎臓内科の臨床研修に従事。関東労災病院腎代謝内科、昭和大学病院腎臓内科(助教・医局長)、小倉記念病院腎臓内科、昭和大学病院総合診療部などで診療経験を積む。2013年より横浜市立市民病院腎臓内科医長を務め、2017年からは埼友クリニックにて腎透析内科部長および院長として診療に当たる。2025年5月より加藤医院3代目院長に就任。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医・指導医、日本糖尿病協会糖尿病認定医、日本腹膜透析医学会腹膜透析認定医、日本透析医学会透析専門医・指導医。
腎臓の働きと薬の影響
編集部
腎臓はどのような働きをしている臓器なのでしょうか?
加藤先生
腎臓は血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として体外へ排出する臓器です。体内の水分や電解質のバランスを保つほか、血圧の調整や赤血球の産生を担い、骨の健康を支える重要な役割も果たしています。この働きが低下すると、体内環境が乱れ、さまざまな不調につながります。
編集部
腎臓に負担がかかると、どのような状態になるのでしょうか?
加藤先生
腎臓に負担がかかると「腎障害」と呼ばれる状態になります。腎障害には急激に起こる急性腎障害と、ゆっくり進行する慢性腎臓病があり、それぞれ原因や経過が異なります。特に急性腎障害は、早期対応が重要となります。
編集部
急性腎障害の原因には、どのようなものがあるのでしょうか?
加藤先生
急性腎障害の原因としては、脱水や感染症、心不全などによる腎血流の低下(腎前性)、腎臓そのものの障害(腎性)、尿の流れが妨げられる状態(腎後性)などがあり、腎障害の原因の一つに薬剤の影響があります。体の状態によっては、薬が腎臓に負担をかけることがあるのです。
編集部
薬と腎臓の関係について教えてください。
加藤先生
薬には肝臓で分解されるものと、腎臓から排泄されるものがあります。腎臓で処理される薬は、腎機能が低下していると体内に蓄積しやすくなり、副作用が出やすくなります。また、薬そのものが腎臓に影響を与える場合もあります。
編集部
具体的に、腎臓に影響を与える可能性がある薬には、どのようなものがあるのでしょうか?
加藤先生
代表的なものとしては、解熱鎮痛薬に含まれるロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が挙げられます。これらは腎血流を低下させる作用があり、脱水状態や高齢の人、もともと腎機能が低下している人では腎障害のリスクが高まることがあります。また、造影CTなどで使用される造影剤や、一部の抗菌薬(抗生物質。アミノグリコシド系など)、利尿薬なども、腎機能に影響を与える可能性がある薬剤として知られています。さらに、骨粗しょう症治療などで使用される活性型ビタミンD製剤により高カルシウム血症をきたした場合、腎機能に影響を及ぼすこともあるため注意が必要です。
編集部
身近な薬が多い印象ですね。
加藤先生
はい。さらに、医師が薬を処方する際に最も警戒する組み合わせの一つとして「トリプルワーミー(三重攻撃)」があります。先ほどの解熱鎮痛薬やNSAIDsと、RAS阻害薬(血圧を下げるためのACE阻害薬やARB[アンジオテンシンII受容体拮抗薬])、そして利尿薬の3種類がそろうと、腎臓は「血流が来ない」「ろ過の圧力が足りない」というダブルパンチ、トリプルパンチを受け、一気に機能が停止してしまう恐れがあるのです。もともとの予備能力が低く、かつ脱水になりやすい高齢の人は特に注意が必要です。
薬による腎障害の経過と回復
編集部
薬による腎障害は回復するのでしょうか?
加藤先生
早期に原因を特定し、適切に対応すれば回復が期待できる場合もあります。ただし、全ての人が完全に元の状態に戻るわけではありません。腎機能の回復の程度は個人差が大きいのが現状です。
編集部
早期対応が重要なのですね。
加藤先生
そのとおりです。いかに早く適切な治療を受けられるかという点が、予後を左右します。薬を開始して体調に異変を感じた場合には、早めに医療機関で評価を受ける必要があります。また普段から、例えば健康診断などで腎機能の数値に異常があった場合は、様子を見たりせずに医療機関で検査することが大事です。
編集部
急性腎障害の経過には、どのような傾向があるのでしょうか?
加藤先生
急性腎障害全体の統計では、おおよその目安として、約60%の人は腎機能が元の状態まで回復しますが、およそ30%の人は慢性腎臓病へ移行し、継続的な管理が必要になります。さらに約10%の人は腎機能を失い、透析療法や腎移植が必要となるケースもあります。薬剤性の腎障害については、個別性が高いため、何割がどうなるなどの傾向として言い切るのは難しく、適宜対応する必要があります。

