WHO(世界保健機関)は2026年5月17日、アフリカ・コンゴ民主共和国で広がるエボラ出血熱について、世界全体で警戒が必要な「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に相当すると宣言しました。この内容について小幡先生に聞きました。

監修医師:
小幡 史明(医師)
自治医科大学医学部卒業 / 現在は医療法人静可会三加茂田中病院、医療法人在宅会みんなのクリニック勤務 / 専門は総合診療科、腎臓内科、感染症科
WHOが宣言した内容とは?
編集部
WHOが宣言した内容を教えてください。
小幡先生
WHOは2026年5月17日、コンゴ民主共和国東部のイトゥリ州で発生したエボラ出血熱について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言しました。ただし、パンデミック(世界的大流行)の基準には達していないとしています。5月16日時点で、イトゥリ州の少なくとも3つの地区でエボラ出血熱疑いが246例、死亡疑いが80例報告されており、医療従事者4人の死亡も確認されています。さらに、コンゴから渡航した2人がウガンダの首都カンパラで感染確定となり、国境を越えた感染拡大がすでに始まっています。
今回の流行を引き起こしているのは、エボラウイルスの一種である「ブンディブギョ株」です。従来のザイールウイルスとは異なり、ブンディブギョ株に対し現時点で承認された特異的なワクチンや治療薬がなく、早期発見、隔離、接触者追跡、支持療法が対策の中心となります。
また、現地では治安の悪化や人口移動の活発化が続いており、WHOによれば実際の感染規模は報告数よりもはるかに大きい可能性があるといわれています。WHOは今後、専門家委員会を速やかに招集し、各国への具体的な勧告をまとめる予定です。
エボラウイルス病とは?
編集部
エボラウイルス病について教えてください。
小幡先生
エボラウイルス病(エボラ出血熱)は、致死率がおおむね50%と高く、日本では最も危険度の高い「1類」に分類されている感染症です。エボラウイルス感染者の血液や体液に傷口や粘膜が触れることで感染します。2〜21日の潜伏期間を経て発熱・嘔吐・下痢などの症状が表れ、重症化すると出血や意識障害が生じます。エボラウイルス病では、病原体の種類によって利用できるワクチンや治療薬が異なります。今回問題となっているブンディブギョ株については、現時点で承認された特異的治療薬やワクチンはないため、輸液、電解質補正、酸素投与などの支持療法を早期に行うことが重要です。
予防には、感染が疑われる人や動物との接触を避け、こまめに石けんと流水で手を洗うことが大切です。流行地域への渡航を予定している人は、現地の最新情報を確認し、十分な感染対策を心がけましょう。

