「お姉ちゃん、私、被害届を出す。もう二度と、あんな暗い部屋に戻りたくない」
数回のカウンセリングを経て、恵美の瞳に少しずつ光が戻ってきました。 決意した彼女は強かった。私はすぐに裕子に連絡し、紹介してもらった弁護士と共に警察へ向かいました。
警察官にこれまでの経緯を話し、保存していた録音データやアザの写真、診断書を提出します。
「これはひどいですね……。よく我慢しましたね」
警察官の言葉に、恵美はまた涙を流しましたが、それは以前のような絶望の涙ではありませんでした。
絶望の涙からの卒業
姉の目から見て、妹がDV被害に苦しんでいるのは明らかでした。しかし、姉が何度も「別れたほうがいい」と助言しても、「私が悪い」と自分を責めるばかりの妹。長年、DV彼氏と過ごしていたせいで完全に洗脳されていたのです。
ですがようやく、カウンセリングのおかげで、妹は今の「異常さ」に気づきます。そして、自分の足で泥沼から抜け出す決意をしたのです。
DV彼氏の、最後の執念
しかし、事態を察知したサトルが黙っているはずもありません。 私のマンションの前に、彼が現れたのです。
「恵美! 出てこい! 悪かった、俺が全部悪かったんだ! お前がいないと死ぬって言っただろ!」
ドアの外で叫び、泣き落としを始めるサトル。かつての恵美なら、この声に絆されてドアを開けていたでしょう。でも、今の彼女は私の手をぎゅっと握りしめ、スマホの録音ボタンを押しました。
「サトルくん、もう会わない。警察にも話したから。これ以上来たら、本当に逮捕されるよ」
恵美の毅然とした声に、外の怒鳴り声が一瞬止まりました。
「……お前、誰に吹き込まれた!? あのクソ姉か!? 殺してやる!」
その言葉を吐いた瞬間、配置していた警察官が彼を取り押さえました。
「おい、今の言葉、脅迫罪になるぞ」
崩れ落ちるサトルを見ながら、恵美は静かにカーテンを閉めました。10年の呪縛が、物理的に断ち切られた瞬間でした。
家にまで押しかけてくるDV彼氏に、ただならぬ恐怖心を感じてしまいます。ですが、事前に警察に相談していたおかげで、すぐに取り押さえてもらうことができました。そしてこの瞬間、本当の意味でDV彼氏から解放されました。
彼氏に依存していた妹は、新しい人生を歩み始めます。

