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「イギリスは女王の時代に栄える」肖像画で読み解く、女王たちのドラマとファッション

ヴィクトリア女王(在位1837〜1901年):愛と喪の衣裳が変えた文化

中産階級の規範となり、大英帝国を築いた女王

Coronation_of_Queen_Victoria_28_June_1838_by_Sir_George_Hayter_(cropped)フランツ・ザヴァー・ヴィンターハルター『ヴィクトリア女王一家(1846年の王室)』, Public domain, via Wikimedia Commons.

エリザベス1世の治世から300年近くが経った1837年、当時18歳であったヴィクトリア女王(1819-1901)が即位しました。ヴィクトリアは1901年に死去するまで、64年という長い在位期間を誇りました。

彼女について特筆すべきは、初恋の人であるアルバートと結婚したことです。同い年のふたりは結婚後も仲睦まじく、9人の子どもたちに恵まれました。

当時のイギリスは、蒸気機関の発明によって世界でもいちはやく産業大国となり、これまでの貴族階級に代わって工場主や投資家などの中産階級が社会の中心となっていった時代でした。

そんな中産階級の人々の道徳的規範となったのが、ヴィクトリア女王一家でした。

夫婦仲は睦まじく、女性は子どもをたくさん産んで家庭を支え、男性が富を増やす。ヴィクトリア朝時代には、このようなジェンダーロールが一般的であったと言われています。

また、クリミア戦争やインドの反乱など、国際情勢が大きく変化した時代でもありました。イギリスは領土を大きく拡大し、大英帝国の名をほしいままにしたのです。

『ヴィクトリア女王の結婚式』ウェディングドレス=白を定着させた?

George_Hayter_-_The_Marriage_of_Queen_Victoria,_10_February_1840_-_WGA11229_(cropped)ジョージ・ヘイター『ヴィクトリア女王の結婚式、1840年2月10日』, Public domain, via Wikimedia Commons.

1840年、結婚式の日を迎えたヴィクトリアは、イギリスの君主としてではなくアルバートの妻として誓いを立てたいと考えました。

そこで彼女は、女王の衣裳である深紅のローブではなく、美徳と豊穣の象徴である白いサテンのドレスを着ることを決めたのです。この「純白の花嫁」というイメージは瞬く間に世界中に広まり、次第に「花嫁=白のドレス」といったスタイルが定着していきました。

やがてアルバートがわずか42歳の若さで亡くなると、ヴィクトリアは悲嘆にくれました。2年間も公務を放棄したのち、公式の場でいつまでも喪服を着続けていたという記録が残っています。

それほどまでに愛し愛された仲睦まじい夫婦を見事に描いたのが、ジョージ・ヘイターの『ヴィクトリア女王の結婚式』です。

結婚式に参列する多くの人々、荘厳な宮殿のその中心部。白いドレスを着たヴィクトリアと正装したアルバートが描かれています。ふたりは手を取り合い、互いに見つめ合っているようです。

ヴィクトリアとアルバートの孫は40人、ひ孫は37人にも及びました。彼らはそれぞれヨーロッパ諸国の王国貴族と婚姻関係を結び、イギリスはますます発展していったのでした。

女王たちのファッションは、彼女たちの人生そのもの

時代も境遇も異なる女王たちが共通して持っていたもの。それは、ファッションを「自分の言葉」として使う意志でした。

この系譜は現代まで続いています。2022年に逝去したイギリスの女王・エリザベス2世(1926-2022)は、ワンカラーのコーディネートと帽子、トレードマークのハンドバックなど、品格あるロイヤルスタイルで国民たちに愛されました。

あなたが彼女らの肖像画の前に立ったとき、そこに描かれたドレスの色や宝飾品の意味を知っていれば……女王たちの「声」が聞こえてくるかもしれません。

◆参考書籍一覧

石井美樹子『図説|エリザベス1世』(河出書房新社)
石井美樹子『図説 イギリス王室1000年史 辺境の王国から大英帝国への飛翔』(新人物往来社)
カーリン・ブラットフォード『九日間の女王さま』(すぐ書房)
中野京子『絵画で読み解く イギリス王室12の物語』(光文社)
中野京子『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社文庫)
内村里奈『名画のコスチューム 拡大でみる60の職業小辞典』(創元社)

配信元: イロハニアート

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