理想の住まいと、重なる衝撃音
窓を開ければ緑が見え、子どもたちの賑やかな声が聞こえる。そんな環境に憧れて、私たちは公園の真向かいに家を建てました。
しかし、暮らし始めて数ヶ月。私の心は、ある「音」に削られるようになっていきました。
「ゴン!……ゴン!」
リビングで寛いでいると、家の外壁に何かが強く当たる音が響きます。公園でサッカーやキャッチボールをしている子どもたちのボールが、コントロールを失って我が家を直撃しているのです。
最初は「元気ね」と笑って見逃していました。しかし、それが一日に何度も、しかも同じメンバーによって繰り返されるようになると、私の心拍数は音がするたびに跳ね上がるようになりました。
越えられた境界線
音以上に私を悩ませたのは、子どもたちの行動でした。
壁に当たったボールは、当然のように我が家の敷地内へ転がり込みます。すると子どもたちは、インターホンを押すこともなく、勝手にフェンスを乗り越えたり庭に侵入したりしてボールを回収していくのです。
「そこは、誰かの家なんだよ」
そう心の中で呟いても、子どもたちには届きません。公園には「ボール遊び禁止」の貼り紙が掲げられていますが、実態としては形骸化しており、毎日のように試合さながらの激しい遊びが繰り広げられていました。
ある日、ついに私は窓を開け、ボールを追いかけて庭に入ってきた少年に声をかけました。
「ごめんね、壁に当たるとお家の中に響いてびっくりしちゃうから、もう少し離れて遊んでくれるかな?」
精一杯、トーンを抑えて優しく言ったつもりでした。少年は「あ、はい……」と小さく答えて公園に戻っていきました。

