信じていた「家族」の形
土の匂いと、朝露に濡れた野菜の輝き。私はこの仕事が好きでした。
結婚して以来、夫の直樹とともに、義実家の農家を手伝う日々。家は別ですが、仕事場は毎日一緒です。
姑の和子さんは、いわゆる「ズケズケ言うタイプ」の人でした。
「そんなんじゃ売り物にならないわよ!」
「都会育ちはこれだから」
厳しい言葉に涙することもありましたが、和子さんはもともと子離れができておらず、不安定な一面がある人。以前、些細なことで取り乱し、自殺未遂のような騒ぎを起こしたこともありました。
「お義母さんも、根は悪い人じゃないはず」
私はそう自分に言い聞かせ、和子さんの性格を理解しようと、なんとか良い関係を築く努力を続けてきたのです。
実家のトラブルと、漏れ出た本音
そんな中、私の実家で問題が起きました。
両親がいわゆる「毒親」気質で、アパートの家賃を滞納し、訴えられてしまったのです。現在は解決していますが、当時は状況を報告しないわけにもいかず、直樹を通じて義実家にも事実を伝えました。
あくまで現状報告のつもりでした。けれど、これが引き金となったのです。
ある夜、疲れ切って帰宅した直樹が、ポツリと漏らしました。
「…おふくろ、あんなこと言わなきゃいいのに」
嫌な予感がして問い詰めると、直樹は言いづらそうに視線を落としました。
「『あんな親がいる子と、結婚させなければよかった』って…。母さんが、そう言ってたんだ」
頭を殴られたような衝撃でした。
今まで、どんなに理不尽な言葉を投げられても「家族だから」と笑って受け流してきた。和子さんの不安定な心に寄り添い、農作業の合間にお茶を淹れ、機嫌を伺ってきた私の努力は、一体何だったのでしょうか。

