知っているのは、私だけ
翌朝も、仕事はやってきます。
和子さんは、私がその言葉を知っているとは露ほども思わず、いつも通り「早くしなさいよ」と命令口調で接してきます。
その顔を見るたびに、直樹の言葉がリフレインします。
(結婚させなければよかった―。心の底では、そう思っていたんだ)
一度壊れた信頼は、二度と元には戻りません。
以前のような「いつか分かり合える」という期待は消え失せ、残ったのは冷めた諦めだけでした。
「どうしたの、ぼーっとして!」
和子さんの声が響きます。私は無表情で「すみません」とだけ答えました。
今の私にできるのは、感情を殺して距離を置くこと。それだけが、自分を守る唯一の手段でした。
自分の心を守るために
それからの私は、必要最低限の会話以外、和子さんと交わすのをやめました。
「冷たくなった」と和子さんは不満げですが、私の心はもう、彼女の顔色を伺うことに疲れ果ててしまったのです。
夫の直樹には、正直な気持ちを伝えました。
「お義母さんのことは、もう無理。仕事は続けるけれど、プライベートで歩み寄る努力はやめるね」
直樹は申し訳なさそうに頷き、それ以上は何も言いませんでした。
農家の嫁という立場上、完全に縁を切ることは難しいかもしれません。でも、無理に「いい関係」を作ろうとする必要なんてなかったのです。
大切なのは、誰かに認められることではなく、自分の尊厳を守ること。
和子さんの言葉に傷つくステージはもう終わりました。これからは、彼女の言葉を「ただの雑音」として聞き流せる強さを育てていこうと思います。
夕暮れの畑で、私は深く息を吐きました。
明日も仕事はありますが、私の心は昨日よりもずっと、静かで自由でした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: kumasan
(配信元: ママリ)

