インプラント治療を検討する中で「即時荷重インプラント」という言葉を目にし、どのような治療なのか気になっている人もいるのではないでしょうか? 手術当日に仮歯まで入れられる治療法として注目されていますが、実は誰にでも適しているわけではなく、知っておきたい注意点もいくつかあります。今回は、即時荷重インプラントのメリット・デメリット、治療の流れなどを、しのぶ歯科医院理事長の小林先生に解説してもらいました。
※2026年4月取材。

監修歯科医師:
小林 祐之(しのぶ歯科医院)
北海道大学歯学部卒業。北海道大学歯学部口腔機能学講座(リハビリ補綴教室)、北海道大学病院の勤務を経て、しのぶ歯科医院に勤務。同医院内にアイディール・スマイル研究所を開設し、先代院長の技術と理念を受け継ぐ。患者さんの意向を尊重しながら適切な治療を提案することを診療理念としている。日本口腔インプラント学会 口腔インプラント専門医、ICOI(国際インプラント学会)認定医・指導医。
即時荷重インプラントの仕組みと特徴
編集部
「即時荷重インプラント」とは、どのような治療なのでしょうか? 従来のインプラントとの違いも教えてください。
小林先生
即時荷重インプラントは、インプラントを入れるのと同時に仮歯を装着し、見た目やかみ合わせをある程度回復させる治療法です。従来のインプラント治療では、インプラントを骨に埋入した後、骨としっかり結合するまでの期間は歯を入れずに過ごす必要がありました。一方、即時荷重インプラントでは手術当日に仮歯まで装着できます。これが、従来の治療法との大きな違いです。
編集部
即時荷重インプラントと一口にいっても、治療するケースによって違いはあるのでしょうか?
小林先生
はい、残っている歯の本数や状態、かみ合わせ、埋入するインプラントの本数によって対応は変わります。例えば、全ての歯を失った人に行う「オールオンフォー(4本のインプラントで全体を支える治療法)」のような治療の場合、仮歯にも上下のかみ合わせの力、つまり荷重がかかります。しかし、前歯1本だけを補うようなケースでは、仮歯に上下のかみ合わせの力がかからないように調整することもあります。そのため、「即時荷重インプラント=当日からかめる治療」とひとくくりに考えるのではなく、ケースごとに違いがあることを知っておく必要があるのです。
編集部
即時荷重インプラントに向いているのは、どのような人でしょうか?
小林先生
まず、口の中の衛生状態がきちんと整っていることが大前提です。これは即時荷重に限らず、インプラント治療全般に共通する条件といえます。加えて、全身の健康状態に問題がないことも重要です。また、即時荷重の場合は仮歯を装着した状態で日常生活を送るため、食事内容など患者さん自身に守ってもらいたい注意事項が多く出てきます。今挙げた注意事項をしっかり守れる人が、即時荷重インプラントに向いているといえるでしょう。
編集部
反対に、即時荷重インプラントで注意が必要なのは、どのような人ですか?
小林先生
かむ力が強い人、歯ぎしり・食いしばりのある人は注意が必要です。そうした人に即時荷重で仮歯を入れると、インプラントにかなり大きな負担がかかってしまいます。過度な力がかかると、インプラントと骨の結合を妨げる原因にもなりかねません。
即時荷重インプラントのメリット・デメリットについて
編集部
従来のインプラントと比べて、即時荷重インプラントにはどのようなメリットがありますか?
小林先生
治療するケースによってメリットは異なります。代表的な利点の一つは「歯ぐきの形を早期に整えやすいこと」です。インプラントは、骨の中に埋まる部分と、歯ぐきを貫通して口の中に出ている部分に分かれています。口の中に出ている部分の歯ぐきの形は、見た目の仕上がりや長期的な安定に大きく関わります。即時荷重インプラントでは、適切な形に作った仮歯を早い段階で装着し、周囲の歯ぐきの形を理想的な状態に導きやすくなるため、見た目・安定性の両面からメリットのある治療法といえるでしょう。
編集部
患者さん自身が感じる即時荷重インプラントのメリットはあるのでしょうか?
小林先生
抜歯したその日のうちに仮歯が入り、歯がない期間を経験せずに済む点が、患者さんにとって大きなメリットでしょう。従来の方法では、治療期間中に歯がない状態で過ごしたり、一時的に入れ歯を使用したりする期間がどうしても必要でした。特に、入れ歯に抵抗があってインプラント治療を選ぶ人にとって、抜歯当日に仮歯が入ることは心理的にも大きな安心につながります。見た目とかむ機能の両面を早い段階でカバーできるのは、即時荷重インプラントの大きな利点だといえます。
編集部
即時荷重インプラントにデメリットやリスクはありますか? 注意したいケースがあれば、併せて教えてください。
小林先生
最大のリスクは、手術直後からインプラントに負荷がかかることで、骨との結合がうまくいかなくなる可能性がある点です。本来、インプラントが骨と結合するためには、埋入後に力をかけない「免荷期間」を設けるのが理想です。しかし即時荷重では仮歯を入れるため、どうしても負荷がかかりやすくなります。患者さんが意識してコントロールできても、夜間の食いしばりや歯ぎしりまでは防ぎ切れません。結果的にインプラントが骨と結合せず、やり直しが必要になる可能性もあります。そのため、リスクが大きいと判断される場合は、即時荷重を選ばないという選択肢も患者さんと共有しながら、慎重に進めていくことが大切です。
編集部
リスクを下げるために、患者さん自身が術後に注意することはありますか?
小林先生
重要なのは食事管理です。インプラントを1〜2本入れるケースでは、その部位で直接かまないようにしてもらうことが大切です。全ての歯をインプラントで治療するようなケースでは、どうしてもかむ動作が必要になるため、食べ物の種類そのものに制限をかけます。手術前や手術直後には、「この期間は軟らかいものしか食べられない」といった具体的な指導を行うのが一般的です。目安としては、術後4週間ごろまでは厳しく制限し、5〜6週間で徐々に緩め、おおよそ8週間ほどで通常どおりの食事ができるようになります。ただし、ケースによって大きく異なるため、担当医の指示にしっかり従うようにしてください。

