干渉は「監視」へと変貌する。カフェイン摂取を「虐待」と罵り、飲み物を没収する後藤さん。休日の健診中も執拗にLINEで報告を迫り、挙句の果てには「胎動を確認する」とおなかを触ろうとする狂気に歩美は震える。
細かすぎるチェックが憂うつ
妊娠中期に入り、体調は安定してきたものの、会社に行くのがどんどん苦痛になってきました。 後藤さんの干渉が、もはや「親切」の域を完全に超えてしまったからです。
「歩美ちゃん!それ、何を飲んでるの?」
お昼休み、私がデスクでひと息つこうとカップを持った瞬間、後藤さんが背後から身を乗り出してきました。
「あ、これですか?市販のミルクティーですけど……」
「ちょっと!原材料見せて!……やっぱり!カフェインが入ってるじゃない!信じられない、歩美ちゃん、これって虐待よ?」
「ぎゃ、虐待って……。1日1杯程度ならお医者様も大丈夫だって……」
「お医者さんは甘いの!ネットで調べてごらんなさい、カフェインがどれだけ胎児に悪影響か。脳の発育が遅れたらどうするの?後悔しても遅いのよ!はい、没収!」
後藤さんは私の手からカップをひったくると、そのまま給湯室へ持っていき、中身を捨ててしまいました。呆然とする私に、彼女は水道水を入れたコップを突き出します。
「これからは水か、私が持ってくる特製のタンポポ茶にしなさい。分かった?」
先輩の要求が異常なレベルに…
それだけではありません。お昼にお弁当を食べていれば「塩分が高い」、外食しようとすれば「添加物の塊よ」と付いてこようとする。私の口に入るもの全てが、彼女の検閲対象になってしまったのです。
さらに苦痛なのが、毎週土曜日の健診後の「報告義務」でした。
(ピコン!) (ピコン!)
土曜日の昼下がり。道義とランチを食べている最中も、スマホが激しく震えます。
『健診終わった?』 『性別分かった?』 『お股のエコー写真、ちゃんと撮った? 見れば私すぐ分かるから!』
「……また後藤さん?」
道義が心配そうに顔を覗き込みます。
「うん……性別が分かったら、お股のエコーを送れって。さすがにそれは抵抗あるよ。プライバシーっていうか、なんていうか……」
「それは異常だよ、歩美。なんで職場の先輩にそんなもの見せなきゃいけないんだ。まだ分からないって突き通せばいい」
私もそう思って、LINEには『まだ隠れてて見えませんでした』と返しました。

