後藤さんの言動は「出産への立ち会い」や「保育園の指定」にまで及び、歩美はついに精神的な限界を迎える。泣き崩れる歩美を支える夫・道義は、会社への相談を提案。歩美は勇気を出して、上司の川島部長に全てを打ち明けた。
「自分の子」先輩から出た驚愕の発言
妊娠7か月。おなかもだいぶ目立ってきました。 それと比例するように、後藤さんの言動は「狂気」に近いものを帯び始めていました。
「歩美ちゃん、陣痛が来たらすぐに私に連絡してね。夜中でも、仕事中でも構わないから」
「えっ、あ……でも、まずは夫や実家に連絡することになると思いますし……」
「何言ってるの!ご主人なんてパニックになるだけでしょ?私、保育士の資格があるんだから!本当は立ち会ってあげたいくらいだけど…陣痛きたらビデオ通話繋いでいいよ!そのほうが歩美ちゃんも助かるでしょ?もう自分の子みたいなものだもの!」
自分の子。 その言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走りました。 彼女の中で、私の赤ちゃんは「私たちの子ども」ではなく「彼女の所有物」になりつつある。
さらに、保育園の見学についても「私も一緒に行くのが当然」という口ぶりです。
「歩美ちゃんが選ぶ園なんて、どうせ甘いところばっかりよ。私がプロの目で、設備や保育士の質をチェックしてあげる。あ、もうリストアップしてあるから。ここ以外は認めないわよ」
我慢の限界…涙が止まらない…
その日の夜。私は家で声を上げて泣いてしまいました。
「道義……もう限界。会社に行くのが怖い。後藤さんの声を聞くだけで動悸がするの。赤ちゃんに良くないって分かってるのに、涙が止まらない……」
道義は私の肩を抱き、静かに、でも強い口調で言いました。
「歩美、もう我慢しなくていい。これは単なる『お節介な先輩』のレベルを超えてる。ストーカーやハラスメントに近いよ。会社の上司には相談できないのか?」
「でも、仕事自体は教えてもらってるし……。プライベートのことで騒ぎ立てるのも、わがままかなって」
「わがままじゃない。君と赤ちゃんの安全に関わることだ。後藤さんの言動のせいで、君は精神的に追い詰められてる。それが『仕事に支障をきたしている』ってことなんだよ」
道義の言葉に、ハッとしました。 確かに最近、彼女の監視を避けるためにトイレにこもることが増え、仕事の効率も著しく落ちていました。
「明日、部長に相談してみる。後藤さんの言動を全部メモして、LINEの履歴も持っていくわ」 「それがいい。もし会社が対応してくれないなら、僕が直接会社に乗り込んでもいいと思ってる。それくらい深刻な事態だよ」

