当時付き合っていた彼との交際は順調で、「このままいけば自然に結婚するのかな」と考えていました。彼は穏やかでやさしく、ケンカもほとんどありませんでした。彼の実家にも何度か遊びに行っていて、お母さんも明るく気さくな人――そんな印象だったのですが……。ある日を境に、彼ママとの距離感が急に変わり始めたのです。
「うちの味を覚えてほしいの♡」
ある休日、私は彼の実家へ遊びに行きました。リビングでお茶を飲みながら話していると、彼のお母さんが突然、「ちょうどよかったわ!」と笑顔で立ち上がったのです。そのままキッチンへ案内され、私の前にドンッと置かれたのは、大きなお鍋と分厚いレシピノート。
「あの子、この味じゃないと満足しないのよ〜。今からちゃんと覚えておいてね♡」
そう言いながら、彼ママは慣れた手つきで煮物を作り始めました。
まだ結婚の話が具体的に出ていたわけでもなく、私はただ彼女として遊びに来ていただけ。突然始まった“花嫁修業”のような空気に、私はかなり戸惑ってしまいました。
しかもレシピノートには、「肉じゃがは砂糖多め」「味噌汁は必ずこの味噌」など細かいこだわりがびっしり。私は「参考にさせてもらいます」と笑顔で返したものの、内心ではかなりプレッシャーを感じていました。
“嫁チェック”のようなメッセージに疲弊…
それからしばらくして、彼ママからメッセージが届くようになりました。
「この前の煮物、作ってみた?」
「次はハンバーグ教えてあげる」
最初は「仲良くしようとしてくれているのかな」と思っていました。ですが、やり取りが増えるにつれ、監視されているような感覚になり、少しずつ息苦しくなっていったのです。
さらには、スーパーで買い物中の写真とともに、「あの子はこの調味料が好きだから!」「お魚を買うときは、こういうのにしてね」と送られてくることも。
だんだん私は、“彼女”というより、“将来のお世話係”として見られているような気持ちになってしまったのです。

