褥瘡とは床ずれとも呼ばれ、身体の一部に長時間の圧迫や摩擦ストレスが加わって起こる皮膚の損傷を指します。
高齢の方や病気によって身体が弱っている方に起こりやすく、予防や早期発見に努めれば重症化を防ぐことが可能です。
本記事では褥瘡予防のための基礎知識や対策、注意点について解説します。
褥瘡の基礎知識について理解を深め、定期的なボディーチェックや対策を通して褥瘡の発生を防ぐように努めましょう。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長
褥瘡(じょくそう)の基礎知識

褥瘡の発生要因を教えてください。
褥瘡とは、長時間の圧迫や摩擦に伴い、特に骨が突出している部位の血流が悪くなり皮膚がただれたり傷ができたりする状態です。褥瘡の発生要因には、局所的な要因と全身的な要因、社会的な要因が挙げられます。局所的な要因には、長時間の同一姿勢や補装具での圧迫、椅子からのずり落ちや布団シーツと服のしわによるものが挙げられます。全身的な要因は、加齢や病気、低栄養状態により皮膚や軟部組織の弾性が低下してわずかな外力でも損傷を受けやすくなることです。発汗や尿失禁、便失禁により皮膚が常に湿っている状態でも損傷を受けやすくなるため、適切なケアを行うための介護体制や人手が欠かせません。日常のケアを通して、褥瘡の予防を意識しましょう。
どのような方が褥瘡になりやすいですか?
体位変換が困難な寝たきりの方だけでなく、痩せている方、低栄養や病気の影響で皮膚が弱っている方も褥瘡の発生に注意が必要です。特に注意が必要な疾患は以下のとおりです。
うっ血性心不全
骨盤骨折
脊髄損傷
糖尿病
脳血管疾患
慢性閉塞性肺疾患
ほかにも、認知症の方で活動量が低下している場合やコミュニケーションや衛生管理に困難が生じる場合は、褥瘡リスクが高まります。褥瘡リスクの高い対象者を理解し、予防を心がけましょう。
褥瘡の好発部位を教えてください。
褥瘡の好発部位は骨が突出している部位です。仰向けで寝ている時間が長い場合は、以下の部位に注意しましょう。
踵
尾てい骨(仙骨部)
肘
肩甲骨
後頭部
仰向けで寝ている場合、尾てい骨(仙骨部)には全体重の40%がかかるといわれており、背中や腰が曲がっている方には特に配慮が欠かせません。横向きで寝ている場合は、以下の部位に注意しましょう。
踵
内くるぶし
外くるぶし
膝の外側
太もも(大転子)
骨盤(腸骨稜)
肋骨
肩(肩峰突起)
耳
寝ているときに限らず、座っている時間が長い方は以下の部位にも注意が必要です。
踵
座骨
仙骨
肩甲骨
後頭部
身体に圧力がかかっている部位は、実際に観察したり手を当てたりして、具体的な場所や程度を確認しましょう。
褥瘡の予防対策

体位交換の頻度や方法を教えてください。
褥瘡の予防には、同じ部位へ長時間の圧迫を避けるため、基本的に2時間おきの体位交換が推奨されています。定期的に体位交換ができるよう、スタッフ間でスケジュールを共有し管理することが重要です。体位変換では圧迫部位を開放し、骨が突出していない部分で身体が支えられる姿勢に整えましょう。体位変換の際におすすめの姿勢には、30度側臥位があります。完全に横向きの姿勢である側臥位から、約30度傾けた姿勢を指し、大転子部や仙骨部への圧迫を防ぐことができます。仰向けから右側30度側臥位に誘導する手順は以下のとおりです。
両肩と臀部支えて対象者をベッドの左側に寄せる
左膝を立てて左膝と左肩を右へ倒す
腰を支えて身体を左側に引き寄せる
頭や背中の後ろと両下肢の間にクッションを入れる
体位変換のときはベッドからの転落、シーツや服との摩擦やずれをなくすため、2人介助で行うのがおすすめです。一人で行う場合はスライディングシートなどの福祉用具を用いると効率よく行えます。事故に注意し、定期的な体位交換を実施して褥瘡の予防に努めましょう。
体圧分散寝具(マットレス)は必要ですか?
褥瘡の予防には、体圧分散寝具が有効です。体圧分散寝具は、身体の突出した部位をクッション性を用いて圧迫を減らす効果があります。さまざまな種類があるため、対象者の褥瘡の状況や好み、スタッフのケアのしやすさを総合的に判断して選択しましょう。対象者が体動困難な場合には、圧迫を自動で切替してくれるエアマットレスが有効です。
スタッフの人手が不足している場合は、体位変換の間隔は4時間以内でよいとされている、粘弾性フォームマットレスや上敷二層式エアマットレスを用いるのも効率的です。対象者やケアのしやすさに適した体圧分散寝具を選択しましょう。
クッションやポジショニングピローの活用方法を教えてください。
身体の一部へ圧迫を集中させず、広い面積で姿勢を保てるようにするには、クッションやポジショニングピローの活用が重要です。仰向けで寝ている場合は、踵に圧迫が集中してしまうため、踵が浮くように足首の下にクッションを入れると効果的です。30度側臥位では、背中の後ろにクッションや専用のポジショニングピローを挟むと姿勢を安定して保てます。側臥位の際に身体を保持しておくことが不安定な場合や、手の位置に困る場合には抱き枕も効果的です。ほかにも、可動域制限がある場合には、背中や膝の下に入れやすいビーズクッションが有効です。クッションやポジショニングピローは褥瘡予防に効果的で簡単に取り入れやすいため、積極的に活用しましょう。
褥瘡予防のスキンケア方法について教えてください。
褥瘡を予防するには、発汗や排泄物により、皮膚を湿ったままや汚れたままで放置しないことが欠かせません。湿った皮膚は摩擦ストレスを高めるため、少しの刺激でも皮膚損傷のリスクが高まります。排泄物が長時間にわたり皮膚に付着していると、刺激物となるだけでなく、細菌感染を起こして褥瘡を悪化させる可能性があります。発汗から皮膚を守るにはこまめに着替えをし、通気性のよい服やおむつを使用したり、必要以上の厚着や不要なおむつを控えたりするのも効果的です。失禁後は、熱すぎないお湯やタオルで強くこすらないように洗浄し、石鹸で洗う場合は十分に泡立てよく洗い流すようにしましょう。洗浄後は優しく抑えるように水分を拭き取り、皮膚の乾燥予防のために10 分以内に保湿クリームを塗るのが有効です。失禁がある場合は、撥水性の皮膚保護剤を塗布することも効果的です。皮膚の清潔以外にも、骨が突出した部位の除圧が困難な場合には、足カバーや腕カバーの使用を検討してみましょう。清潔を保ち、摩擦や圧迫をできるだけ抑える工夫をし、皮膚の保護に努めましょう。
褥瘡予防の栄養ケアについて教えてください。
褥瘡の予防には、高カロリーで高タンパク質、高ビタミンの栄養価が高い食事の摂取が重要です。栄養が不足すれば、痩せて骨が強く突出するようになったり、浮腫をおこしたりして褥瘡を起こしやすくさせます。特に皮膚の修復にはたんぱく質や鉄、亜鉛やビタミンC、カルシウムなどの栄養素が重要です。また、白米などの炭水化物から摂取できるエネルギーが不足すると、皮膚の修復に重要なたんぱく質が使用されてしまうこともあります。褥瘡が傷となって浸出液が出てしまう場合には、水分と一緒にたんぱく質が放出してしまうこともあるため注意が必要です。食事の管理が難しい場合には、栄養補助食品やサプリメントを活用することが効果的です。定期的な体重測定や筋力評価を行い、栄養状況の把握を通して褥瘡予防に努めましょう。

