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「致死率が高い」「隔離が必要?」SNSで広がる『ハンタウイルス』の疑問に専門家が回答!

「致死率が高い」「隔離が必要?」SNSで広がる『ハンタウイルス』の疑問に専門家が回答!

「致死率が高い?」「人から人にうつる?」「感染したら隔離される?」と、クルーズ船での集団感染をきっかけに注目を集めているハンタウイルス感染症。SNSでは不安や疑問の声も広がっています。しかし専門家の間では、現時点でパンデミックへ発展する可能性は低いという考えが主流です。今回はハンタウイルス感染症について、マウントサイナイ医科大学助教(Assistant Professor)で米国老年医学専門医の山田悠史先生に詳しく解説してもらいました。

山田 悠史

監修医師:
山田 悠史(医師)

マウントサイナイ医科大学 老年医学・緩和医療科 アシスタントプロフェッサー。2008年慶應義塾大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部附属病院(現・東京科学大学病院)にて初期研修後、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院内科、同大学病院老年医学科フェローを経て現職。2021年、日本における新型コロナウイルスワクチンの正確な情報発信と医療現場の負担軽減を目的に「コロワくんサポーターズ」を結成し、LINEチャットボット「コロワくんの相談室」をリリース。同年、医療従事者向け医療英語学習プログラム「Medical English Hub(めどはぶ)」を設立し、代表を務める。フジテレビ系列「FNN Live News α」公式コメンテーター、Podcast「山田悠史の医者のいらないラジオ」パーソナリティ。 著書に『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)、『認知症になる人 ならない人 全米トップ病院の医師が教える真実』(講談社)などがある。日本総合内科専門医、米国内科専門医、米国老年医学専門医。

コロナ禍生活の再来? ハンタウイルスへの不安を徹底整理

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編集部

クルーズ船でのハンタウイルス集団感染が話題ですが、本当に「次のパンデミック」になる可能性はあるのでしょうか?

山田先生

専門家の見方としては「現時点ではパンデミックになる可能性は低い」でほぼ一致しています。その理由は大きく2つあります。

一つ目は、人から人にうつる力がそもそも弱いこと。1人の感染者が平均して何人にうつすかという「広がりやすさの数値(基本再生産数:R0)」は、ハンタウイルスではおよそ1前後と見られています。これは新型コロナウイルス流行初期の2〜3と比べて小さく、適切に隔離すれば自然と収まりやすい性質を持っているということです。

二つ目は、皮肉なことですが「重症化が早すぎる」ことです。感染した人は短時間で動けないほど具合が悪くなるため、街を歩きまわって次々と他人にうつしていくというパンデミックを成立させる流れがそもそも作られにくいのです。新型コロナウイルスのように、軽症の人がたくさんいて通勤・通学時に感染拡大していくような広がり方は、ハンタウイルスでは起こりにくいと考えられています。

編集部

今後の感染拡大において警戒すべきリスクはありますか?

山田先生

以下の3点は私たちが頭に入れておきたい新たなリスクです。

・発症前からうつる可能性がある
・気候変動でネズミの住む地域が変わりつつある
・国境を越えた長期旅行で、ハンタウイルスが思わぬ場所に運ばれ得る

WHO(世界保健機関)や各国の保健当局が丁寧に監視を続けているのは、まさに「もしも」に備えるためです。

編集部

新型コロナやインフルエンザは「人から人への感染」で広がりますが、ハンタウイルスの場合は、どのようにして感染が広がるのでしょうか?

山田先生

大前提として、ハンタウイルスは新型コロナウイルスやインフルエンザとは異なり、感染のきっかけのほぼすべてが「ネズミ」です。感染の多くはネズミの排泄物との接触によって起こるとされており、しばらく使っていない物置などで、ネズミの尿や糞の粉末を空気と一緒に吸い込んでしまうケースがほとんどです。

しかし、今回のクルーズ船で見つかった「アンデスウイルス」は、数十種類あるハンタウイルスの中で唯一「人から人へ」うつることが分かっている厄介なウイルスです。ここがほかのハンタウイルスと大きく異なる特徴といえます。

ただし、すれ違いざまや短時間の会話ですぐにうつるわけではありません。「長時間、近い距離で過ごす」ことで感染します。今回は「同じ船で大人数が長期間寝泊まりする」という、日常生活ではなかなかない条件がそろったために、人から人への集団感染が起こったと考えられています。

編集部

「クルーズ船での集団感染」というニュースを聞くと、身近な恐怖として捉えてしまいがちです。現時点で、日本の日常生活において気を付ける必要はありますか?

山田先生

現時点で、日本の日常生活において過度に恐れる必要はないでしょう。先述のとおりハンタウイルスは基本的に「特定のネズミが生息している地域で、その生き物に近づくとうつる」ウイルスです。今回のアンデスウイルスも、もともとのすみかは南米のアンデス山脈周辺であり、日本の街を歩いているだけでうつるような病気ではありません。ただし「流行地へ旅行に行く際はむやみにネズミの痕跡に近づかない」など、万が一に備えて正しい知識を持っておくことは自分自身を守るために大切です。

「致死率30〜50%」の真相―日本の医療体制でも死亡リスクはある?

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編集部

ネット上では「致死率が高い」という情報も見られます。この「致死率」という数字や報道は、どのように受け止めるべきでしょうか?

山田先生

現在、CDC(米国疾病予防管理センター)やWHOから報告されているハンタウイルス感染症の致死率はおよそ30〜50%と、非常に高いという事実に間違いはありません。医療従事者としても、極めて警戒すべき重篤な疾患であることは事実です。一方で、この数字の背景にある“盲点”も同時に、冷静に見極める必要があります。

一つは、「軽症例が見逃されている可能性」です。現在算出されている致死率については、多くは流行地で急激に重症化して病院に運ばれ、検査で確定診断がついた人のデータをもとに計算されています。しかし、実際には「ちょっと体調が悪いな」という程度のまま、ただの風邪だと思って自宅で治ってしまったような軽症の感染者が、調査の網から漏れている可能性は考えられます。もし、そうした軽症例が一定数存在するのであれば、ハンタウイルスの本当の致死率は報告の値より低くなります。

編集部

医療体制の差によっても、致死率は変わる可能性があるのでしょうか?

山田先生

ハンタウイルスには特効薬がないため、治療の主軸は人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)などを用いた高度な支持療法になります。日本のように集中治療の設備や医療アクセスが充実している医療体制下であれば、海外の流行地で報告されている数字よりも致死率を低く抑えられる可能性はあります。
SNSやニュースではセンセーショナルな数字ばかりが強調されがちです。しかし大切なのは、「数字の恐ろしさ」と「自分にとっての現実的なリスク」を区別して考えることです。日本で普通に暮らしている私たちにとっては、現時点で感染する可能性が低いうえ、万が一のリスクに対しても強固な医療体制があります。致死率の高さだけで判断するのではなく、自分にとって現実的にどの程度リスクがあるのかを冷静に理解することが重要です。報道に触れる際は、一歩引いた視点で冷静に受け止めてもらいたいと思います。

編集部

新型コロナウイルス流行初期のように、ハンタウイルスによって社会的な隔離や行動制限(ロックダウン)が必要になる可能性はあるのでしょうか?

山田先生

現時点のウイルスの性質を考える限り、社会全体を巻き込むロックダウンや、一律の行動制限が必要になる可能性は極めて低いと考えられます。今回のアンデスウイルスは同じ部屋で長時間一緒に過ごすなど極めて密接な接触がなければ広がらないため、社会で爆発的に連鎖していくリスクは低いといえます。もし日本国内で感染者が確認されたとしても、求められる対応は局所的なものにとどまるはずです。突然ウイルスの性質が変わったりしない限りは、街全体を封鎖したり、お店を閉めたりといった大規模な制限は必要ないでしょう。

配信元: Medical DOC

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