「家族や自分が病気になったとき、治療選択肢は多いほうが安心できる」――そう考える方は多いのではないでしょうか。近年、医療の進歩に伴い多様な治療薬が登場しているものの、脳血管、心血管、腫瘍、神経などの領域には依然として満たされない医療ニーズ(アンメットニーズ)が残されています。このバイエル薬品株式会社は2026年4月22日、「すべての人に健康を 画期的なイノベーションでつなぐ」をテーマに東京都内で記者会見を開催しました。会見には同社代表取締役社長のアシュラフ・アルオウフ氏と、独・バイエル社 医療用医薬品部門 研究開発・臨床開発オペレーション グローバル責任者のクリストフ・クーネン氏が登壇。創業から165年以上、日本進出から1世紀を超える同社が課題に向き合うべく開発に取り組んでいる主力製品の最新動向と、「次の医療」をどう描いているのか、両氏が語った戦略の全体像をご紹介します。
100年企業、さらなる成長を目指す――すべての人に健康を届けるために
会見の冒頭、アルオウフ氏が繰り返し用いたキーワードは「イノベーション」でした。創業から165年以上、日本進出から1世紀を超えた同社が、なお「革新的イノベーションの実現に挑戦していく」と語る背景には、既存製品の効能拡大と、その先にあるパイプライン(研究開発中の薬剤群)の広がりがあります。
バイエル薬品のミッションは「Health for all, Hunger for none(すべての人に健康を、飢餓をゼロに)」です。同氏は、日本のアンメットニーズに応えるイノベーションを可能な限り早く届けるための実現手段として2つの軸を提示しました。1つは、社外のスタートアップ・大学・他社との連携を積極的に進める「オープンイノベーション」。もう1つは、薬の作り方そのものを多様化させる「モダリティの拡張」です。「これから5年、10年の我が社を支えるのはパイプラインだ」というメッセージが、会見全体に貫かれていました。
拡大続く薬剤の開発戦略――創薬技術(モダリティ)多様化の時代
続いて登壇したクーネン氏は、研究開発戦略の核心として、「薬の作り方そのもの(創薬基盤技術:モダリティ)が多様化している」点を強調しました。これは患者さんに提供される治療選択肢が、これからどのように拡大していくのかを考えるうえでも重要な視点です。
低分子から抗体薬、細胞、遺伝子へ、5つの創薬基盤技術
従来の医薬品の主流は、化学合成によって作られる「低分子薬」でした。近年はそこに、タンパク質を用いた抗体医薬品、放射性物質をがん細胞に届ける標的放射線療法、患者さん自身の細胞や提供者由来の細胞を治療に用いる細胞治療、遺伝子を直接届ける遺伝子治療といった、新しい創薬基盤技術が導入されてきています。クーネン氏は「各疾患を深く理解し適切なモダリティを組み合わせることが、医療アンメットニーズに応える鍵」と述べました。
また同氏は、社内研究に加え、細胞治療プラットフォームのBlueRock社および遺伝子治療プラットフォームのAskBio社をドイツ・バイエル社の完全子会社として擁するなど、創薬企業との連携・買収を通じてモダリティの幅を広げていることにも言及しました。アカデミア領域においては、京都大学との10年以上にわたる連携を継続し、アカデミック・イノベーションネットワークの拡大を実現。さらに、日本発のスタートアップやアカデミアを支援する「Bayer Co.Lab Japan」を通じて、日本におけるイノベーションの社会実装を加速させるモデル構築に取り組んでいるといいます。

